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中島京子『FUTON』

2008-10-10 16:04:36 | ノンジャンル
 今日、宮田珠己さんが「ジェットコースターにもほどがある」で言及されていた、八景島シーパラダイスのフリーフォール「ブルー・フォール」に乗ってきました。高さ107mは確かに絶景、しかし両隣りに人が座っていたので、空に浮いているという感じにはなりませんでした。落ちる瞬間も本では、なかなか落ちないなあと思っていたら、いきなり落ちるということでしたが、ご丁寧にもカウントダウンされ、落ち方も一旦少し落ちて慣れてもらってから本格的に落ちるというもので、スリルが半減していました。これでは前に乗った後楽園ゆうえんちのフリーフォールと大差ありませんでした。宮田さんが乗った当時の形に戻すことを切に希望します。

 さて、高野秀行さんがファンである、中島京子さんが'03年に書いた小説デビュー作品「FUTON」を読みました。
 40代で幼い男の子がいて離婚しているデイブは大学で日本文学の講師をしていますが、授業に出ていた日系人エミに魅せられ、恋人になります。しかし、旅行していた日本人の若い男性についてエミが日本に行ってしまうので、東京で行なわれる田山花袋の「蒲団」についての講演を口実に、自分も東京へ行きます。鶉町にあるエミの祖父のサンドイッチ・チェーン店でエミを待ちますが、エミはなかなか現れず、その代わりに、2度に渡って町が焼け野原になった体験を持つ、エミの曾祖父の絵を描いているイズミと一夜を共にします。そして講演が終わり、9・11でアメリカに帰れなくなったデイブはエミと再開し、エミから日本に留学するための推薦状を書くことを頼まれるのでした。
 一方、デイブは「蒲団」の改訂版を書いています。文学者・時雄のもとに弟子として芳子が関西からやってきますが、同志社大の学生と芳子が京都へ泊まりがけで旅行し、それ以来芳子はその男と見境なく付き合うようになります。それでも時雄は芳子が操を守っていると信じて、淡い恋心を抱くのですが、やがて芳子が男と京都で寝たことを白状し、逆上した時雄は芳子の父を呼び寄せ、父とともに芳子を故郷へ帰すのでした。そして後に残った、芳子が使っていた蒲団を時雄の妻が見ると、夫の匂いとその涙の跡が残っているのでした。

 現代の話と「蒲団」の話が平行して書かれ、どちらも若い女性に惹かれる中年男性の心理が描かれます。他の中島さんの作品と同じように、話者は一人ではなく、同じ事件が異なる視点によって語られていきます。語られている話は割に平凡な話なので、その話術にこそこの小説の楽しむべき点があるのだと思います。そうした小説をお探しの方にはオススメです。