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中島京子『イトウの恋』

2008-10-20 18:21:44 | ノンジャンル
 高野秀行さんがファンであるという、中島京子さんの'05年作品「イトウの恋」を読みました。
 私立中学の社会科の新任先生・久保耕平は、屋根裏部屋にあった曾祖父の旅行カバンの中から、伊藤亀吉の書き付けを発見します。伊藤亀吉とは、明治初期に日本の奥地を探検したイギリス女性イザベラ・バードに同行した通訳で、手紙の中でI・Bへの慕情を書き連ねていました。北海道でイザベラと別れてしまった伊藤は、母の死を知らされ横浜に帰りますが、イザベラのことを忘れがたく、彼女の乗った船に自分も乗ったところで書き付けは中断されていました。久保は郷土部の唯一の部員である一年の赤堀とともに、その書き付けの続きを持っているかもしれない人を探し、伊藤のひ孫で、劇画の原作を書いている女性・田中シゲルに会いに行きます。田中は赤堀が自分のファンであることに気をよくし、協力した結果、自分の父違いの妹がイギリスにいて、その妹が書き付けの続きを持っていることが分かります。そして、その続きには、船の中で伊藤とイザベラが再会しますが、イギリスに伊藤が来ても伊藤が差別に苦しむのを知っているイザベラが、香港に伊藤を置き去りにして、一人シンガポールに旅立ち、伊藤は香港で酒浸りになります。が、自分が死刑になった後は昔死んだ男の骨と一緒に自分の骨を埋めてほしいと頼まれていた女性が死んだという知らせを受けて、日本に帰り、無事二人の骨を一緒に納めてあげ、自分も家庭を持って人生を全うしたと書いてあるのでした。
 実在したイザベラ・バートと伊藤亀吉をモデルにして書かれたフィクションで、前作の「FUTON」と同じように現在形のテクストと過去に書かれたテクストが平行して進んでいきます。伊藤は当時20才、イザベラは40才近くで、年の差もイザベラに慎重な行動を取らせた原因かもしれません。ちょっとロマンチックな小説ではあります。オススメです。