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川上未映子『ヘヴン』

2009-11-27 13:03:00 | ノンジャンル
 川上未映子さんの'09年作品「ヘヴン」を読みました。
 中学2年で斜視の僕はそれが理由で、学校で優等生をリーダーとするグループから暴力的な虐めを日常的に受けていますが、ある日筆箱の中に「私はあなたの仲間です」と書いてある紙を発見します。また新手の虐めと思いますが、手紙は机の中に場所を移して続き、ついに場所と時間を指定して会おうと言ってきます。そこで会ったのはやはりクラスで虐められているコジマでした。彼女は母に離婚された父を思うためにわざと自分の体を不潔にしているのだと言い、それからも二人は手紙を交換し、何度か直接会って話をします。ある日、僕は体育館に連れ込まれてひどいケガを負いますが、その場をコジマに見られていて、彼女は私たちは彼らを受け入れているのであって、弱い立場を選びとっていることが分かったのだと誇らし気に言います。僕はケガの治療のため病院に行った時、たったの1万5千円で斜視を治す手術が受けられることを知り、それをコジマに告げますが、彼女は僕を裏切り者扱いして去ります。それからコジマは僕を決して見ることがなくなりますが、僕は彼女に手紙を送り続け、ついにもう一度会ってくれるという返事をもらいます。しかし約束の場所に行ってみると、そこにはコジマだけでなく、男女の虐めのグループもいて、彼らの罠だったことを知ります。彼らは僕らにその場でセックスしろと言い出し、僕をブリーフだけの姿にし、彼女の服も脱がせろと言います。僕は石を手に持ちリーダーに襲いかかろうとしますが、コジマはそれを止め、自ら服を脱いで全裸になり、虐めのグループの連中を笑いながらなでてまわっているところを、人に見つかって僕らは保護されます。僕は母にこれまでの体験をすべて話すと、母はもう学校など行かなくていいと言い、僕は斜視の手術を受けることになります。そして手術後、僕の見た世界は今まで見たこともない素晴らしい世界だったのでした。
 虐めの場面の凄まじさは吐き気を催すほどで、「僕」が登場人物とかわす会話も平易な文章ながら中学生とは思えない哲学的なものでしたが、彼らの思いはストレートに伝わってきました。虐めを扱っている小説ですが、不思議に惹き付けられる小説です。青春小説が好きな方にはオススメです。