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内田樹『ためらいの倫理学 戦争・性・物語』

2010-06-11 16:09:00 | ノンジャンル
 内田樹さんの'01年作品『ためらいの倫理学 戦争・性・物語』を読みました。著者が自分のウェブ・サイトに発表した文章を中心に構成された本です。
 あとがきから引用させていただくと、「自分の正しさを雄弁に主張することのできる知性よりも、自分の愚かさを吟味できる知性のほうが、私は好きだ」ということを繰り返し述べている本であり、主に批判の対象となっているのはフェミニストとポストモダニストということになっているようです。この本でもなるほどと思ったことはいくつかあって、例えば、戦争であれジェノサイドであれ、それは「自分がそれを起こした」と確信している者など一人もいないことから、それは「誰か」が起こしたものではなく、全員が「自分こそ最初で最大の被害者である」と思い込む人々の間で、それは起こるのだという指摘、戦争は国民国家の成立とともに始まり、国民が憎悪と敵意という情念的ファクターを引き受け戦争の主体となった時に絶対的形態を持ち得たという指摘、戦争が始められた「後になって」、それにより守るべき共同体が事後的に成立するという事情、「私は賢い」と思い込んでいる奴はバカだという言説の正当性などでした。またこの本で言及している、高橋源一郎さんの『これで日本は大丈夫』と小田嶋隆さんの『日本問題外論』は読んでみたいと思いました。
 これも今までに読んだ内田さんの本と同じく、非常に示唆的で読みやすい本でした。戦争に対して改めて考えてみたい方などにオススメです。