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中野美代子『砂漠に埋もれた文字―パスパ文字のはなし―』

2010-06-19 15:31:00 | ノンジャンル
 中野美代子さんの'71年作品『砂漠に埋もれた文字―パスパ文字のはなし―』を読みました。
 1269年フビライハンは自らの国・元にオリジナルである文字の制作をチベット僧パスパに命じ、チベット文字を基にしてパスパ文字ができあがります。それは漢字とは異なりアルファベットと同じように単子音、単母音を表す文字であり、それまでモンゴル語を表すのに使われ、明瞭さを欠いていたウィグル文字の欠点を無くしたものでした。パスパ文字は元朝の間はモンゴル人によって使われていましたが、習慣とは恐ろしいもので、モンゴル人の大半は依然としてわかりにくいウィグル文字を使い続けました。本著では、一旦は歴史に忘れ去られたパスパ文字が再発見された過程と研究の進展の様子、パスパの伝記的記述、パスパ文字の音韻的構造の解説、パスパ文字で書かれた代表的な遺文の紹介、パスパ文字の先祖探しと子孫探しについて書かれています。
 中野さんの博覧的学識の広さには驚くばかりですが、音韻学に関する記述は専門的すぎて付いていけませんでした。それでも実際に図版で様々な文字を見ることができたのは、大変面白い体験をさせてもらえたと思います。中央アジアの文化に興味のある方にはオススメです。