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スティーヴン・キング『書くことについて』

2015-01-09 15:06:00 | ノンジャンル
 スティーヴン・キングの’00年作品『書くことについて』を読みました。
 訳者あとがきから引用させていただくと、「1999年6月、スティーヴン・キングは命を落としかけた。メイン州西部にある夏の別荘の近くを散歩していたときに、脇見運転をしていた男の車にはねられたのである。(中略)三週間におよぶ入院生活と何度かの手術のあと、キングはバンゴアの自宅に帰り、それから二週間後に、“世界の終わりの一歩手前のような”痛みに耐えつつ、車椅子で机に向かった。その机の上には、事故に遭うまえに書いていた原稿が置かれていた。それが本書『書くことについて』である。キングはふたたび書きはじめた。
 目次がついていないので、わかりにくいかもしれないが、本書は次のような構成になっている。 1 履歴書(C.V.) 2 道具箱(Tool Box) 3 書くことについて(On Writing) 4 生きることについて(On Living) 5 閉じたドア、開いたドア(Door Shut, Door Open)
 まずは“履歴書”から。それはキングの半生の回想録であり、おぼろげな記憶しかない2、3歳のころから、成長し、作家になり、ドラッグとアルコールづけの生活を送っていた30代後半までの38のエピソードから成っている。輪になっているのは、もちろん、“書くことについて”だが、稀代のストーリーテラーはそこに怖さや、痛さや、おかしさをたっぷりまぶし、『キャリー』や『ミザリー』や『トミーノッカーズ』などの作品の誕生秘話なども織りこみつつ、切れ味鋭い洒脱な38のミニ・ストーリーに仕上げている。
 次の“道具箱”では、書くために必要となる基本的なスキルの数々が開示される。たとえば、副詞を多用するなとか、受動態は極力避けろとか。(中略)箴言(アフォリズム)も楽しいし、トム・ウルフ、アーネスト・ヘミングウェイ、ジョン・スタインベック、H・P・ラヴクラフトなど多くの作家の文章の実例をあげての講釈も興味深い。
 つづいては、“書くことについて”-------(中略)多くの事柄が理屈ではなく、直観的なものに関係していて、それを言葉にするのは至難のわざであることがわかってきた。それで行き詰った。キングはいったん筆をおいた。それから1年ちょっとのブランクがあった。そして事故。“書くことについて”の項が執筆されたのは、その約1カ月後のことである。キングは魔法を解きあかす作業を再開した。
 (書くための)魔法の技は、“たくさん読み、たくさん書くこと”から始まって、文体、叙述、描写、プロット、ストーリー、状況設定、比喩、会話、人物造形、象徴的表現、テーマ、推敲、テンポ、背景情報(バックストーリー)、リサーチ、さらには出版エージェントへの手紙の書き方に到るまで多岐にわたっている。(中略)
 そして、最後に“生きることについて”。先に記したように、1999年キングは交通事故に遭い、九死に一生を得た。偶然の結果ではあるが、その事故によって回想録は現在につながり、“書くこと”は“生きること”とオーバーラップした。“私は書くために生まれてきたのだ”と、死の淵から生還した作家は語る。ものを書くのは、“一言でいうなら、読む者の人生を豊かにし、同時に書く者の人生も豊かにするためだ。(中略)幸せになるためだ。(中略)” 
 巻末の“閉じたドア、開いたドア”には、『ホテル・ストーリー』と題する短篇の冒頭部の一次稿と、手直しずみの二次稿が掲載されている。当初は本書のためにその部分だけを書くつもりだったが、途中で“なにやら素晴らしいことが起こり、ストーリーに乗せられて、いつのまにか最後まで書きあげてしまった”らしい。それが『1408号室』で、最初はオーディオブックの『血と煙』の一篇として発表され、のちに短篇集の『幸運の25セント硬貨』(新潮社)に収録された。(後略)」。
 そして最後にキングがこの3,4年に読んだ本96冊、そして新装版の刊行に際して、2001~2009年に読んだ82冊がリストアップされています。

 本の題名から堅い内容ではないのかと身構えていましたが、キングの小説と同様、平易な表現と読みやすい文体で書かれていて、楽しんで読ませていただきました。“副詞や受動態をなるべく使わない”などのアドバイスは、私も今後文章を書く際に参考にさせもらいたいと思います。またここにも引用させていただいた田村義進さんによる「訳者あとがき」の前半部分の全文は、私のサイト「Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)」の「Favorite Novels」の「スティーヴン・キング」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/