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宮田珠己『無脊椎水族館』その2

2020-01-20 09:24:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

・このウメボシイソギンチャクがまたすごいのだ。(中略)イソギンチャクの口から小さな口から小さな同じイソギンチャクがわさわさ出てくるのだから、異星生物的なスペクタクルにちがいない。

・われわれにとって貝といえば、おおむね食べるものであり、食物連鎖でいえばだいぶ下のほうに位置する生きものと考えがちだが、実際には一部の貝は獰猛な捕食者であり、魚のようにすばやくはないけれども今見たような着実に前進する力強い動きには、捕食者っぽい威圧感がある。

・エイはいい。
 居酒屋に行くと、とりあえずビール、と言ったりするが、水族館ではとりあえずエイ、である。

・硫化鉄の鱗を持つ巻貝で、ミリタリー感あふれるその姿は、まるでSFに登場する空想の生きもののように見える。人体にも鉄分は含まれているとはいえ、鉄の鱗で防御するいきものはこいつぐらいだろう。鉄だから磁石に反応するらしく、逃げようとして磁石に吸い寄せられる姿を想像すると面白い。
 驚いたことに、通常の海水で飼育すると、錆びて死んでしまうそうだ。酸素濃度の関係らしい。深海ではないと生きられないのである。

・そういうわたし自身も、単独で水族館に行くことが多いから、この《おじさんひとり水族館》現象はひそかに全国的な広がりを見せていると言っても過言ではなさそうだ。

・説明書きによると、シタザクラサビライシといってサンゴの仲間らしい。
 まあ、そんなようなものだろうと思ったが、後に調べるとサンゴのくせに移動するというので感心した。

・最初からあまり極端な無脊椎動物、たとえばオオイカリナマコやウコンハネガイなどを見せても、人はノレないものだ。そんなよく知らないものではなくて、誰もが知っていて、それなりに愛嬌がある、それでいて変なカタチの、そういう中間的な生きものからの導入が重要なのだ。

・チョウチンアンコウはオスがメスの体に寄生し、しまいには合体してメスの一部になって生きることで知られているが、ここにもそれが強調してあり、モレイ氏によると、理想的な生き方だとのことであった。
「そうかなあ。ずっとメスの一部なんてイヤですよ。自由に好きなところに行けないじゃないですか」
 そう反論すると、
「ヒモみたいなもんでしょう。最高じゃないですか」

・一番見てホッとする海の生きものが何かといえば、コウイカやコブシメの一族のような気がする。

・イソギンチャクを食べる?
 そんな生きものはあまり聞いたことがない。
 隣のモニターにまさにその捕食映像が流れていてたまげた。本当にイソギンチャクを丸飲みしている。サンゴノフトヒモが口を大きく開けて、イソギンチャクのあのビラビラした触手も何も気にせず、まるごとガモッとくわえ、そのままずいずいと飲み込んでいた。
 すごいものを見た。
 こんな生きものがいたとは。
 サンゴノフトヒモがイソギンチャクを食べる映像が撮影されたのは世界でも初めてらしく、この映像はここアクアワールドでしか見られない貴重なものだった。

・その先にはミドリフサアンコウがいた。最近わたしが気になっている生きものである。魚だから脊椎動物であるけれども、こういう変なカタチは観察し甲斐があるのでしみじみ眺めた。
 非の打ちどころのないカタチだ。
 かわいい。
 カタチもいいし色もいい。なぜこんなチャーミングな柄なのか。あんなにたくさんヒゲが生えているのは何か意味があるのか。
 家に帰って「ミドリフサアンコウ」で画像検索したところ、かわいい画像がどっさり出てきて悶死しそうになった。
 カエルアンコウといい、アカグツといい、チョウチンアンコウといい、フウリュウウオなんかもそうだけど、アンコウの仲間は奥が深い。

 引用しておきたい楽しい文章はまだ山のようにあって、それを書いていると、本をまるまる写すことになりそうでした。宮田さん独特のユーモラスな絵と、そして何よりも様々な無脊椎動物の写真が多く掲載されていて、それらを見ているだけでも楽しめる本でした。

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto