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阿部力也『デジタルグリッド』その2

2021-04-13 08:12:00 | ノンジャンル
 昨日のマスターズの松山英樹の優勝はかなりしびれましたね。あと3ホールを残して2位と5打差あったのが、終わってみたら1打差での優勝! しかし一点引っかかるのはマスメディアが「日本人での初優勝」と報じていること。本来なら「アジア初の優勝」と報道すべきでしょう。実際、中継していたTBSテレビではそういう区分がなされていました。(大陸別になっており、アフリカ3回ともなっていて、これは南アフリカの白人、ゲーリー・プレイヤーのことでした。)人種や国籍をスポーツに持ち込むのは禁句だと私は思っています。

 さて、昨日の続きです

 セル内では、ほぼ100パーセント再エネ電源による電力供給も可能になります。もちろん、従来の電力系統との協調によるものです。セルは高い自立能力を持ちます。停電とは無縁になります。災害に強い電力網になります。一方で、従来の電力系統は、従来ほどの高い信頼性を要求されなくなります。(中略)
 今まで電気代を払うだけだった地方の工業団地や商業団地は、エネルギーを産出するセンターに変貌します。(中略)地方自治体はこのような動きに対し、考えられる限りのサポートをするようになるでしょう。補助金ではなく、ルールを変えるだけです。団地計画では電源センターを設置し、再エネや燃料電池などを設置し、系統受電に併設して自営線による電力供給も行うようになるでしょう。自治体はこれに協力します。団地内の需要家は電気の安い方から必要な量を購入し、外部への売電が有利なときは売電することが可能になります。自治体が電源センターの運営主体になっていくことも、将来出てくるでしょう。地銀もこれをフルサポートするでしょう。自治体は電力ビジネスで収益はあげずに、他の地域よりも安価でセキュリティーの高い電力特区を作る方が、メリットがあります。企業誘致を促進し、不動産収入や雇用増加、人口増加の施策として電力特区を活用します。保育所や学校などの環境整備を図り、人口を増やすのです。地方活性化には人口増加が一番効果があります。最終的には税収の増加につながります。
 デジタルグリッドルーターはIPアドレスを持ち、日本中どこにでも電気を瞬時に送り届けることができるようになります。どんな種類の発電なのか、いくらなのか、CO2価値はどれだけか等、識別できるようになり、きわめて精度の高い取引ができるようになります。電力取引は同時同量の縛りがあるため、30分ごとに需給バランスを取る市場が生まれます。これは株式市場のリアルタイム取引のようになっていくでしょう。太陽光や風力などの種別はCO2価値などの違いがあるので、株式取引で言えば異なる銘柄のようになるでしょう。実際の取引は、電気的な制約も考慮して実現されなければならないので、精緻な認証技術が必要になります。電力取引には高いセキュリティーも要求されます。ブロックチェーンのような新しい金融技術が生まれてきたことにより、このようなことが可能になりつつあります
 電力産業の市場は情報通信産業の比では済まないほどの拡大を見せるでしょう。再エネは燃料代に相当する従量コストがゼロに近いため、減価償却が終わった設備は長時間にわたり大変大きな競争力を持ちます。それにより電気代が低下していくと、競争力を持ち出す産業や製品が現われだします。それにより、電気の使用量が拡大します。さらに安価な電力を供給しようとする発電事業が増加します。このような循環により、電気という商品の販売量はどんどん拡大するでしょう。
 電気から生まれる合成燃料というものが経済性を持ち出すと、日本はエネルギー輸出国に転換します。90パーセント以上のエネルギーを輸入に頼っていた国が、どこでどう転換したのだと世界中から注目される日は意外に近いと思っています。
 本書では、このようなことを一つ一つ丁寧に説明していきます。(中略)
 本書を読んで「電力とエネルギーの世界に大転換が起こるかもしれない、自分たちはその入口に差し掛かっているのだ、人類は化石燃料時代からのパラダイムシフトを迎えているのかもしれない」と思っていただける方が多ければ多いほど、それは本当に実現します。そして、世界にその仕組みを提供できます。この本がその一助になればと願っております。」

 大変興味深い内容で、実際に目次を見ると、「電力インターネット」や「リゾーム」的な発電ネットワークを思わせる概念などが述べられているのですが、なにしろやはり学術書の体をなしているので、全体の3分の1まで読むので精一杯でした。いずれにしろ、上記のように、地球の温暖化・気候変動の問題に有力な手段が提示されている点で、読む価値は十分ある本だと思います。