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蓮實重彦『映画崩壊前夜』

2009-10-22 18:06:00 | ノンジャンル
 南田洋子さんが亡くなりました。私にとってはマキノ監督の「日本侠客伝・関東篇」での女将さん役と、溝口監督の「近松物語」での長谷川一夫に思いを寄せる娘役が印象に残る女優さんでした。ご冥福をお祈り申し上げます。

 さて、蓮實重彦先生の'08年作品「映画崩壊前夜」を読みました。'01年以降に書かれた時評風の文章を集めた本です。
 いつものように大半の文章が解読するのに労力を要しましたが、そうした中で新たに見てみたいと思った映画はエリア・スレイマン監督「D.I.」、トッド・ヘインズ監督「エデンより彼方に」、ペドロ・コスタ監督「ヴァンダの部屋」、ジョー・ダンテ監督「ルーニー・テューンズ バック・イン・アクション」、ティム・バートン監督「ビッグ・フィッシュ」、チョン・ジェウン監督「子猫をお願い」、マイケル・マン監督「コラテラル」、トニー・スコット監督「マイ・ボディガード」など、そして読みたいと思った本はロバート・パリッシュの「わがハリウッド年代記」でした。蓮實先生の文章にはこの本に限らず「~ねばならない」とか「~にほかならない」とか「~のはずである」といった表現が多く見られ、これは戦略としてこうした言葉を使っておられるのだと思いますが(というのも、こうした表現を使わない文章を書かれることもあるからですが)、ここから感じられるのは「ルール」とか「義務」といった概念であり、先生の文章を読む時に感じる違和感の原因の一つはそこにあるのかもしれないと思いました。(実際に作家による映画の中で作家特有の「ルール」が発動する時の快感を何度か述べておられます。)またご自分の立場を特権化されていることも、読者によっては居心地の悪さを感じるでしょう。
 今回の本で特筆すべきは誤植の多さです。私が気付いただけでも10箇所近くあり、今までの先生の本では見られなかったことだけに気になりました。(ちなみに出版社は青土社です。)いずれにしても、いろいろ書いてきましたが、やはり様々な示唆に富んだ本です。映画好きの方にはオススメです。

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