また昨日の続きです。
「「エネルギー兼業農家」のコンセプトはこうして生まれた」
新緑が濃くなり始めた頃、二人は自転車をこぎながら「本を出そうぜ」と、本書の相談を始めました。二人は、既に2010年2月に『日本再生の国家戦略を急げ!』を出しているので、今回は二冊目になります。前著でも、大規模専業農家を作れば、日本の農業がつよくなるという「常識」を疑い、地域単位の「6次産業化」というオルタナティブを提示しました。
今回は、さらに「エネルギー兼業農家」というコンセプトを打ち出しています。
「このデフレで、特に農産物価格が下落する中で、単品生産の大規模専業農家なんて潰(つぶ)れるといっているようなものだな」
「この山林七割の国では、兼業農家でしか生き残れないけど、今さら工場誘致や公共事業獲得はないでしょ」
「いや、この時代だから発電する農家でしょ」
といった具合です。
とにかく、きれい事はヤメにして、徹底したリアリズムでいこうということになりました。結局、農業の担い手が減るのは、農業が「儲からない産業」になったからです。儲かっている農村地域には、30代40代の若い担い手がいっぱいいます。
農家が食べていけなければ、食料危機が来たら対処できません。食料危機も原発事故以上にリアルになってきましたから、消費者としても無関心ではいられないはずです。
こうして、農家が現実的に生きていける方法は何かを追求していった結果が、大規模専業農家でもなく、電力会社でもなく、農業者自身が発電する「エネルギー兼業農家」だったのです。私たちが提唱する近未来の農家経営モデルは「6次産業化」+「エネルギー兼業農家」です。
私たちは通常の電力システム改革の「常識」にも疑いを向けます。通常、電力自由化論が想定しているのは、自家発電を行っている大・中企業です。これまで「発電する農家」は考えられてきませんでした。しかし農村は自然エネルギーの宝庫です。そこで農業者自身が主人公になって「発電する農家」になることが必要です。そうすることで初めて「地域分散・ネットワーク型」のエネルギー・システムが実現できるのです
このように、「エネルギー兼業農家」は、担い手が高齢化し、衰退する農業・農村を救っていく新しい農家経営モデルであるという意味にとどまりません。それは、社会システム全体から見ても大きな歴史的・社会的意味があります。
「社会システムは変わる」
前に述べたように、グローバル化が一層進展していくことが見込まれる中で、これまで「常識」とされてきたのは、農業においても大規模化路線の追求です。その背景には、高度成長時代の重化学工業や原発・大規模火力発電事業に象徴される「集中・メインフレーム型」経済システムの考えがあります。そうした考え方を背景に、「農業をもっぱら行う」という専業化によって、コストを削減し、大量生産したものを大量に販売する仕組みです。
しかし、この路線では、人口減少とデフレ経済下においては価格引き下げを求められ、「安売り合戦」の蟻(あり)地獄に陥るようなものです。農業経営を維持することはできません。そもそも大規模化で利益を追求する「集中・メインフレーム型」の経済システムは、人口が増え、高い経済成長がなければ、輸出がはけ口にならないかぎり、行き詰まってしまいます。まさに、今の日本はそうした状況です。
こうした状況のもとでは、一つひとつの事業者が小規模でも、スパコンとICTの発達を背景にしてネットワークで結ばれれば、瞬時にニーズをつかむことができ、十分に効率的になります。そして、この二十一世紀の「地域分散・ネットワーク型」経済システムが世界の流れになっているのです。スーパーよりPOSシステムを使ったコンビニの方が堅調に伸びている、あるいは固定電話に代わって携帯電話やスマートフォンが伸びているのが象徴的です。もちろん、気象システムを組み込んだ「賢い送配電網」であるスマートグリッドもそうです。
農業分野でも、多様な消費者・実需者のニーズにかなった「量と品質と価格」の商品を生産するために、必要な加工をしたり、あるいはICTを使った産直や直売所等で販売したりすることを通じて、高付加価値・効率化を実現する6次産業化に取り組むことが重要になってきます。
さらに農家は、エネルギー事業に取り込むことでさらなる収益が望めます。
再生可能エネルギーについて、2012年7月に導入された固定価格買取制度によって、東京電力のような電力事業者は、再生可能エネルギーの発電事業者の採算性を考慮した価格で20年間継続して買い取る義務を負うことになっています。
(また明日へ続きます……)
→サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
→FACEBOOK(https://www.facebook.com/profile.php?id=100005952271135)
「「エネルギー兼業農家」のコンセプトはこうして生まれた」
新緑が濃くなり始めた頃、二人は自転車をこぎながら「本を出そうぜ」と、本書の相談を始めました。二人は、既に2010年2月に『日本再生の国家戦略を急げ!』を出しているので、今回は二冊目になります。前著でも、大規模専業農家を作れば、日本の農業がつよくなるという「常識」を疑い、地域単位の「6次産業化」というオルタナティブを提示しました。
今回は、さらに「エネルギー兼業農家」というコンセプトを打ち出しています。
「このデフレで、特に農産物価格が下落する中で、単品生産の大規模専業農家なんて潰(つぶ)れるといっているようなものだな」
「この山林七割の国では、兼業農家でしか生き残れないけど、今さら工場誘致や公共事業獲得はないでしょ」
「いや、この時代だから発電する農家でしょ」
といった具合です。
とにかく、きれい事はヤメにして、徹底したリアリズムでいこうということになりました。結局、農業の担い手が減るのは、農業が「儲からない産業」になったからです。儲かっている農村地域には、30代40代の若い担い手がいっぱいいます。
農家が食べていけなければ、食料危機が来たら対処できません。食料危機も原発事故以上にリアルになってきましたから、消費者としても無関心ではいられないはずです。
こうして、農家が現実的に生きていける方法は何かを追求していった結果が、大規模専業農家でもなく、電力会社でもなく、農業者自身が発電する「エネルギー兼業農家」だったのです。私たちが提唱する近未来の農家経営モデルは「6次産業化」+「エネルギー兼業農家」です。
私たちは通常の電力システム改革の「常識」にも疑いを向けます。通常、電力自由化論が想定しているのは、自家発電を行っている大・中企業です。これまで「発電する農家」は考えられてきませんでした。しかし農村は自然エネルギーの宝庫です。そこで農業者自身が主人公になって「発電する農家」になることが必要です。そうすることで初めて「地域分散・ネットワーク型」のエネルギー・システムが実現できるのです
このように、「エネルギー兼業農家」は、担い手が高齢化し、衰退する農業・農村を救っていく新しい農家経営モデルであるという意味にとどまりません。それは、社会システム全体から見ても大きな歴史的・社会的意味があります。
「社会システムは変わる」
前に述べたように、グローバル化が一層進展していくことが見込まれる中で、これまで「常識」とされてきたのは、農業においても大規模化路線の追求です。その背景には、高度成長時代の重化学工業や原発・大規模火力発電事業に象徴される「集中・メインフレーム型」経済システムの考えがあります。そうした考え方を背景に、「農業をもっぱら行う」という専業化によって、コストを削減し、大量生産したものを大量に販売する仕組みです。
しかし、この路線では、人口減少とデフレ経済下においては価格引き下げを求められ、「安売り合戦」の蟻(あり)地獄に陥るようなものです。農業経営を維持することはできません。そもそも大規模化で利益を追求する「集中・メインフレーム型」の経済システムは、人口が増え、高い経済成長がなければ、輸出がはけ口にならないかぎり、行き詰まってしまいます。まさに、今の日本はそうした状況です。
こうした状況のもとでは、一つひとつの事業者が小規模でも、スパコンとICTの発達を背景にしてネットワークで結ばれれば、瞬時にニーズをつかむことができ、十分に効率的になります。そして、この二十一世紀の「地域分散・ネットワーク型」経済システムが世界の流れになっているのです。スーパーよりPOSシステムを使ったコンビニの方が堅調に伸びている、あるいは固定電話に代わって携帯電話やスマートフォンが伸びているのが象徴的です。もちろん、気象システムを組み込んだ「賢い送配電網」であるスマートグリッドもそうです。
農業分野でも、多様な消費者・実需者のニーズにかなった「量と品質と価格」の商品を生産するために、必要な加工をしたり、あるいはICTを使った産直や直売所等で販売したりすることを通じて、高付加価値・効率化を実現する6次産業化に取り組むことが重要になってきます。
さらに農家は、エネルギー事業に取り込むことでさらなる収益が望めます。
再生可能エネルギーについて、2012年7月に導入された固定価格買取制度によって、東京電力のような電力事業者は、再生可能エネルギーの発電事業者の採算性を考慮した価格で20年間継続して買い取る義務を負うことになっています。
(また明日へ続きます……)
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