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三崎亜記『逆回りのお散歩』

2013-10-21 10:14:00 | ノンジャンル
 今日はリベラル派の希望の星だったジョージ・マクガバン氏の3回忌です。改めてご冥福をお祈り申し上げます。

 さて、三崎亜記さんの'12年作品『逆回りのお散歩』を読みました。長編『逆回りのお散歩』と短編『戦争研修』が収められた本です。
 『逆回りのお散歩』では、高校の弁論大会で出会い、親しくなった聡美と和人が久しぶりにA市で再会します。聡美はB市の小さな会社で事務員をしていると言い、和人は首都での有名な食品メーカーを辞め、地元に帰ってきたと言います。高校の弁論大会で知り合った彼らは、自分たちを取り巻く様々な問題について唯一語り合える友人となっていったのでした。そんな二人の前には「A市とC町の統合を成功させよう」という垂れ幕がかかっていて、話題は自然とその方へ傾きます。和人はネット上で統合反対の書き込みが多くなされていること、統合反対派の運営するサイトも存在することを聡美に知らせます。やがて聡美は公衆トイレに統合反対のチラシが置かれているのを見つけ、スーパーの掲示板にも統合反対の貼り紙を多く見つけます。実家で三十年前のA市の職員録を見つけると、ある時期C町の者が多く職員として採用されていることもを知ります。和人にそれを知らせると、和人はC町出身の弓田という市長の時代と、統合の話が出た5年前と、職員交流制度が始まった最近の3度に渡ってC町の者がA市の職員に多く採用され、現在そうした職員はA町の市役所の主要な部署に配置されていることを聡美に教えます。そんなある日、聡美は久しぶりに高校の同級生との飲み会に参加し、そこで統合に反対すると、参加者全員から一斉に責められます。帰りに和人の部屋に寄ると、それは落書き事件の影響だろうと教えてくれます。落書き事件とは、少年サッカーでA市とC町のチームが決勝戦で当たり、その際、微妙な判定でA市のチームが逆転負けした後、審判が買収されていたという噂が広まり、A市にC町を中傷する落書きが出現し始め、市は解決策として、C町の実態や悪口には何の根拠も無いことを、子どもには学校で、大人は会社ごとに市役所から専門の講師がやって来て、高齢者は老人会の集まりで徹底的に叩き込んだ結果、落書きがぱったりと止まったという事件でした。その際、市は講師の派遣をコンサルティング会社に委託し、その結果、実績を買われ、コンサルの社長がA市の副市長に抜擢されたのでした。そして聡美は先日飲み会で一緒だった同級生との軋轢を修復するため、彼らが出店するという「統合推進フェスティバル」に参加します。やがて、周囲の鋪道にたむろする人々が現れ出しました。彼らの顔ぶれは多彩でしたが、皆、統合推進のゆるキャラである「合わサルちゃん」のお面を着けていて、そのお面は目・耳・口がすべて、イラストの「手」によって塞がれていました。そして正午になると、彼らは一斉に会場の周りを、時計回りとは逆に歩き出し、「時を巻き戻そう!」「統合表明前のA市へ!」「立ち止まって考えてみよう!」と方々で声を上げ始めました。聡美が和人に電話すると、和人はそれは「お散歩デモ」だと教えてくれるのでした‥‥。
 『戦争研修』では、舞坂町の役人で、残業で税金の滞納者を訪れている私は、隣接する森見町が呼び掛けた四町合同の戦争事業実務研修に参加することになります。戦争事業というのは、隣接する自治体に“交流イベント”という名の戦争を仕掛け、それによって経済の活性化を促すというもので、国が5割、県が4割の費用を負担してくれるというものでした。私は研修で森見町の役人である杉田さんと知り合いますが、しばらくして公約として戦争による町の活性化を公約とする杉田さんの父が森見町の新町長に当選します。私は杉田さんが森見町によりわが町へ送られた諜報員であることを知り、彼の敵として戦争を迎える覚悟をするのでした。

 これまでの三崎さんの小説と同じく、ありえない設定の中で動く人物たちをリアルに描写してくれていて、今回も一気に読み終えてしまいました。なお『逆回りのお散歩』の詳しいあらすじは、私のサイト「Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)」の「Favorite Novels」の「三崎亜記」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

周防正行監督『終の信託』その2

2013-10-20 09:27:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 満州へもう一度行って、無になりたいと語っていた江木。折井は子守唄を江木に歌い、彼の手を握って顔を寄せます。翌日、江木の顔を両手で囲む妻。その様子を覗き見る折井。
 折井はストレスによる急性胃潰瘍の出血が見られることから、江木を苦しみから少しでも早く解放してあげるべきか、もう少し様子を見るべきか迷います。奥さんに長く看病してもらっていたことを気にしていたし、治療費もなるべく少なくして金を奥さんに多く残してあげたいと江木が言っていたと折井が言うと、妻も頷きます。「気管のチューブを外してあげてもいいですか? チューブだらけになって無理矢理生かされるのは嫌だと言っていました。もうこの状態になって3週間。意識が戻らない可能性は高く、自然に任せてあげた方がいいのではないでしょうか? これ以上の延命治療を望まれますか?」と折井が言うと、妻は「私にはよく分かりません。ただ仕方がないのなら」と言い、折井は「お子さんともご相談なさってください」と言います。
 看護婦が江木の清拭をしてると、それを手伝う折井。訪ねてきた江木の妻と息子と娘に「最後に声をかけてあげてください」と折井が言うと、妻は「ありがとう」と言い、息子と娘は見舞いに来なかったことを詫びます。「長い間お待たせして申し訳ありませんでした。私が臆病なばかりに」と折井は言って、チューブを抜くと、江木は苦しんで暴れだしますが、折井が鎮静剤を次々に投与していくと、やがて静かになります。「ごめんなさい」と泣き崩れる折井でしたが、しばらくして落ち着くと子守唄を歌い始めるのでした。
 3時から待っていた折井が、4時20分になってようやく塚原検事に呼ばれます。ICレコーダーのスイッチを入れ、聴取を始める塚原。江木のことを聞かれ、辛抱強く、醜い姿を見せるのを恥じる、とても繊細な人だったと語る折井。平成13年12月2日、心肺停止状態だったが呼吸も血圧も安定していたのだね、と塚原が言うと、折井は反論しますが、塚原は「聞かれたことだけに答えなさい」と高圧的な態度を取ります。人工呼吸器をつけなくても呼吸していたこと、脳死ではなかったことにも折井は反論しますが、塚原の高圧的な態度は変わりません。待合室に帰りの希望時間を伝えられると掲示されていたとして、折井は6時に人と会う約束があると言いますが、塚原は協力してくれればすぐ終わると言います。専門家は自宅療養も可能だったと言っていると塚原に言われ、反論する折井。江木の妻が「これ以上長びかせても仕方ない」という説明しか折井から受けてないと証言したことも塚原は言い、チューブを抜けば死ぬと思っていたところが死ななかったので、致死量の鎮静剤を投与したことも、折井に認めさせます。これまで折井に認めさせた話をまとめて塚原が話し、それをタイプさせて、出力した書面に折井は署名と認印の押印をさせられます。5時40分となり、帰ろうとする折井を、無理矢理引き止める塚原。今回のことを医療行為だと思っているのか?と塚原は言い、判例によって尊厳死として認められるのは、死が避けられず死が迫っている患者に限り、本人の意思が明示されていることが条件だと言いますが、それに対し、折井は江木との間に交わされた話を語り、彼を苦しみから解放させてあげるために「殺した」ことを認めると、塚原は逮捕状を示して、折井に手錠と腰縄をかけ、部屋から連れ出します。
 そしてラスト。「二十日間の取調べの後、折井綾乃は殺人罪で起訴された。裁判では、江木の妻・陽子が、江木の残した『喘息日誌』の存在を明らかにした。日誌は、綾乃が江木の担当となってから書き始められ、15年間で61册になっていた。その最後のページに『延命治療は望まない。全ては折井先生にお願いした』との一文があった。裁判所は、その一文を『リビング・ウィル』と認めたが、『そもそも被告人の説明には明らかな誤りがあり、患者には回復の望みがなかった訳ではない。加えて家族への説明も不十分であった』として、懲役二年、執行猶予四年の有罪判決を下した。」の字幕で映画は終わります。

 ワンシーン・ワンカットの部分もある“演出”の映画でした。特にラストの検事と折井のやり取りは見事だったと思います。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

周防正行監督『終の信託』その1

2013-10-19 10:05:00 | ノンジャンル
 周防正行監督・脚本の'12年作品『終の信託』をWOWOWシネマで見ました。
 川の堤防に花束を置く折井(草刈民代)。コート姿の彼女は検察庁に行き、呼び出し状を示して待合室に通されます。彼女を待たせておけと言う塚原検事(大沢たかお)に、助手は「どうして3年も経ってから告発したのですか?」と聞きます。検事に「主治医の先生が言うので、仕方がないと思った」と語る江木の妻。
 診察を受ける江木(役所広司)は詳細に喘息日誌をつけています。江木の主治医の折井は、江木が1月に一度は発作を起こし、今年に入って2度も入院していることから、慢性になってきていると告げます。吸入ステロイドだけでなく、副作用の強い経口ステロイドも飲まなければならないのでしょうか?と聞く江木に、効果と副作用のバランスを考えながらやっていきましょうと答える折井。
 夜の病室に折井が入ると、医師の高井(浅野忠信)が後ろから抱きしめ、二人はベッドの上で愛し合います。ホノルルの学会に行くという高井に、せめて見送りをしたいと折井が言うと、高井は誰かに見つかったらどうする?と言います。トイレの鏡で化粧を直していた折井は江木の発作を知らされ、急行します。落ち着いた江木は「恥ずかしいです」と折井に言うと、折井は「何も考えずゆっくり休んでください」と言います。
 折井は高井を飛行場で見送りに行きますが、高井には見知らぬ派手な女が同行していました。帰国した高井に女のことを追及する折井は、逆に「俺、結婚するなんていったっけ?」ととぼけられます。その夜、当直だった折井は体調がすぐれないと言って当直室で休みますが、酒と睡眠薬を飲み、自殺未遂を起こします。目覚めた折井に高井は「俺を病院から追い出すつもり? 本当にどうするの?」と言われます。
 江木を診察する折井は、もう退院できそうだと言うと、江木はこのCDのオペラの6曲目が素晴らしいので是非聞いてみてくださいと言ってCDを貸します。それは『私のお父さん』という曲で、江木が書いた訳詞を読みながら曲を聞いていた折井は泣き出します。CDの件で江木に礼を言う折井に、江木は「あの曲は悪党のお父さんから結婚資金をふんだくるために娘が歌う喜劇の曲だ」と教えます。
 検察庁の待合室で待たされる折井。塚原検事は約束の時間を30分過ぎても、聴取を始めようとしません。
 雨の日。江木は満州で育ち、ソ連が攻めてきた時、妹が撃たれ、痛くて泣き叫んでいた妹の声が段々弱くなり、いよいよ死を迎えると、早く楽になれるようにと母が子守唄を歌っていたことを最近よく思い出すと折井に語ります。人が死ぬ時、最後まで残るのが聴覚だと言い、自分が死ぬ時に例の子守唄を歌ってほしいと折井に頼みます。
 退院した江木が土手を散歩しているのに偶然会った折井は、CDを貸してくれた時、自殺つもりではなく、ただ全てを忘れて眠りたかったと言うと、江木は土手に沿って空と水が一緒になるところまで行くと、そこは子供の頃の満州で、自分が溶け込んで無になれる気がすると言い、長く看病してもらった妻にこれ以上辛い思いをさせたくないし、子供たちにもこれ以上苦労をかける訳にいかないと言い、妻にしてやれるのは介護から解放させてやること、治療費を抑えて金を残してやることだとして、「その時が来たら早く楽にしてください。ただ生かしておくために体中チューブにつながり、肉の塊として生かされたくない。僕は先生を信頼している。先生に決めてほしい、僕が我慢しなくていい時を」と言うと、折井は「分かりました。でも江木さんがいなくなったら、私どうしたらいいんですか? あなたがいてくれたから、私はここまでやってこれた」と答えます。
 土手で倒れているところを発見された江木は心肺停止の状態で病院に担ぎこまれますが、折井の心臓マッサージで血圧は戻ります。人工呼吸器をつけ、バイタルも落ち着きますが、意識は戻らず、自発呼吸も1分に1回か2回しかされません。無酸素状態が長く続いたので脳に損傷を受けていると妻に説明する折井。妻は夫が最近薬も飲まず、寒い中1人でなぜ土手などに行ったのだろうか?と言います。(明日へ続きます‥‥)

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清水義範『羽黒冥府道』

2013-10-18 10:33:00 | ノンジャンル
 北尾トロさんが推薦していた、清水義範さんのソノラマ文庫の一冊、'88年作品の『羽黒冥府道』を読みました。
 諸戸征人(もろとまさひと)は叔父の諸戸貞夫とともに、霊媒師の許を訪れます。吉野大峯山の山中で、怪異に遭遇してからひと月近くが過ぎていました。その際、美少女美由(みゆ)の口を借りて語られた何者かの霊の言葉を反芻しました。それは、人間界と霊界との間にある〈壁〉が破れ、穴があいている、そしてその穴を通って、悪霊が正しくない輪廻、邪輪廻をしてこの世に甦っているという話、善霊と悪霊が戦っているという話でした。そしてその話の中には政界の黒幕、秦政二郎の名前も出ていました。霊媒師には悪霊が憑き、征人に「羽黒へ来い。生まれ変わる祝いに、その山の中で、貴様を殺す」という言葉を残して去っていきます。
 病院では大峯山で雷に打たれケガをした霞の行者の看病を美由がしていました。美由の祖母は、彼女の母が育った東京に行ってもいいと言ってくれるのでした。
 征人と貞夫はジャーナリストの宮家に秦政二郎のことを調べてほしいと言います。経歴から何から全て謎の秦に興味を持った宮家は、早速調査を開始します。征人と貞夫は悪霊が言っていた羽黒とは山形県の羽黒山であろうと推測し、征人は部活の先輩から護符をもらい、上京してきた美由と叔父とともに羽黒山に向かいます。大峯山で征人を殺そうとした大男、檜笠才蔵も、好奇心から彼らを追います。新幹線の中で、征人らは、霞の行者の話で、高名の修験者が羽黒山で全身に切り傷をつくって、高い杉の木の上のほうの枝にひっかかって死んでいたという事件のことをを話します。
 彼らは霞の行者の紹介で、阿古屋の聖という行者を訪ね、彼に羽黒三山を案内してもらいます。そこには即神仏が多くある地域もありました。ある晩、美由に善霊が憑き、間もなく、この羽黒山に邪輪廻しようとしているものの名は亜死羅で、西補陀落(にしふだらく)と呼ばれる秘所で生まれようとしている、と予言します。一方、秦の邸宅の庭に侵入して様子を伺っていた宮家は、秦に見つかり、斬堕気(ざんだき)と呼ばれる悪霊に斬り刻まれ死にます。
 阿古屋の聖は、征人らを東補陀落という奇岩のある場所に連れていきますが、西補陀落という場所は伝説となっていて、今はどこにあるか分からないと言います。征人は自転車に乗り、山々を巡ってその場所を探しますが、ある日トンネルに入ると、途中から幾つにも分かれ、やがて敵の罠にはまったことを知ります。しかし、そこに現れた摩天道人という名の老人に助けられます。湿原では地中から現れたミイラたちに襲われますが、檜笠が現れ、一緒に戦ってくれ、駆けつけた美由は指先から白光を放ってミイラたちを倒すのでした。
 彼らに宮家の死のニュースが知らされます。そして彼らの前に摩天道人が現れ、彼らを西補陀落に連れていってくれます。そこにも奇岩がありましたが、空がみるみる暗くなり、無数の餓鬼玉とミイラと斬堕気が襲ってきます。征人は座禅を組んで呪文を唱えると、彼の体から白光が広がり、悪霊は退散します。そしていよいよ巨大な鬼の首が現れますが、征人の放つ白光の中で宙に跳んだ摩天道人が鬼の額に一撃を食らわすと、鬼の顔は2つに割れ、無数の破片に砕け散りました。その後に出て来た悪霊の本体は、「ここで生き返ることはあきらめるが、おれが生まれ変わる時の用意に、ここにある黄金はもらっておこう」と言うと、怪光が奇岩に当たり、奇岩が割れると、中から大量の金塊が現れ、それが宙に浮くと、北の空に飛んで行ってしまいました。征人は、秦という既に邪輪廻をしていう者もいるし、これからも決して油断はできない、あくまでも戦う、と心に誓うのでした。

 ここに書いたのは、内容のほんの一部で、他にも面白いエピソードが満載で、ワクワクドキドキする小説をお探しの方には是非お勧めしたい本でした。この本はシリーズの2册目ということで、機会があれば、シリーズの他の小説も読んでみたいと思います。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

増村保造監督『黒の超特急』その2

2013-10-17 10:09:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 工藤は財津と中江のふがいなさを叱り、「陽子に消えてもらおうか?」と言います。財津に陽子を呼び出させ、中江が1人で陽子を殺せと言う工藤。殺人を躊躇する中江に対し、工藤はアリバイは自分が保証するから、中江には桔梗を四谷の料亭に呼べと命じます。桔梗の許を訪れた中江は5千万を渡すと言い出し、桔梗が1億だと言うと、すぐにそれも飲み、桔梗は逆に怪しみます。今夜料亭でゆっくり話そうという中江に、桔梗は自分の身に何かあったら仲間が警察に通報することになっていると言います。一方、財津は陽子をマンションへ呼び出します。お前は私の後を継いで大物政治家になれと財津に言う工藤。
 桔梗は陽子に、テープをしかけるには罠でもいいから応じた方がいいと言いますが、陽子は怖がります。俺は金がほしいんだと言う桔梗は、俺たちはこのままでは虫ケラで、俺は将来大企業と肩を並べたいんだと言います。私もお金がほしいと言う陽子。桔梗はもう一つ決定的な証拠として、睡眠薬入りの酒を財津に飲ませ、彼を全裸にさせ、全裸の陽子との写真を撮るために、自分にマンションの部屋のスペアキーを渡してほしいと言います。
 料亭で待つ桔梗は中江が遅いので、自分を止める女将を突き飛ばして店を出ますが、3人の男に囲まれ半殺しの目に会い、「どん百姓、命が惜しければ岡山に帰れ!」と言われます。一方、陽子はテープレコーダーを花瓶に仕掛けますが、そこに現れた中江は、財津に陽子を連れて来てほしいと言われたと言います。彼女がここにいると言い張ると、中江は陽子が桔梗といつ知り合いになり、2人で何をしてるのかと問いつめ、わしらをゆする相談をしてるんだろうと言うと、陽子はあんたたちのマネをしただけだと答えます。中江が黒い皮の手袋をしているのを見て、「私を殺しに来たの?」と陽子が言い、「桔梗が何もかも知っている。証拠もある」と言うと、中江は「あいつは今頃くたばっている」と言い、「おとなしくしてたら店を出せたのに」と言って、陽子を絞殺します。花瓶の中からテープレコーダーを回収する中江。一方、半殺しに会った桔梗はタクシーでマンションを目指します。
 中江は陽子の死体を運び出し、車で去ります。桔梗はスペアーキーでマンションの部屋に入ると、本箱の中からテープレコーダーを取り出します。
 桔梗は中江へ電話し、あんたと財津が新幹線について30分ほど話している証拠のテープがあると言います。買わないなら警視庁へ持って行く、買うならマンションに来いと桔梗は言い、マンションに来た中江が一度テープを聞かせてほしいと言うと、テープからは陽子の「助けて!」という苦し気な声が聞こえてきます。殺人の証拠なのだから1億じゃ安い、死刑を免れるためなのだから、あんたの儲け全額の2億で売ると桔梗が言うと、中江はそれでも買うと言います。死体をどう始末した?と桔梗が問うと、重りをつけて海に沈めたと答える中江。桔梗はテープは売らないと言い出し、「この声を聞いて考えが変わった。人を殺してまで俺は金を得ようとは思わない」と言うと、中江は「悪党にならんと金儲けはできん」と答え、桔梗は「この声を聞いても平気なのか?」と言って、陽子の苦しむ声のボリュームを上げてテープレコーダーを中江に押し付けます。中江は桔梗に飛びかかり、乱闘となりますが、桔梗は陽子の苦しみを味わわせてやると言って、中江の首を締め、失神すると花瓶の水を浴びせ、「馬鹿らしい、どうせ死刑なのだから」と言って、待機していた刑事たちを部屋に入らせます。「テープごとこいつを渡しますよ」という桔梗。桟橋で陽子の死体の確認をする桔梗。刑事は工藤と財津も逮捕できそうですと言うと、桔梗は「僕はただ金がほしかっただけ。そのためにあの女を殺してしまった」と言って立ち去ります。検事の取り調べを受ける中江は、汚職事件のことも全て話せば死刑は免れるかもしれないと聞き、「一切合切白状します」と元気づきます。列車の中でその記事を読む桔梗は、平行して走る新幹線を「いいですね」と隣の席の乗客に言われ、カーテンを閉めるのでした。

 吐き捨てるような科白がここでも生きていて、登場人物の迫力が伝わってくる“演出”の映画でした。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto