今日はリベラル派の希望の星だったジョージ・マクガバン氏の3回忌です。改めてご冥福をお祈り申し上げます。
さて、三崎亜記さんの'12年作品『逆回りのお散歩』を読みました。長編『逆回りのお散歩』と短編『戦争研修』が収められた本です。
『逆回りのお散歩』では、高校の弁論大会で出会い、親しくなった聡美と和人が久しぶりにA市で再会します。聡美はB市の小さな会社で事務員をしていると言い、和人は首都での有名な食品メーカーを辞め、地元に帰ってきたと言います。高校の弁論大会で知り合った彼らは、自分たちを取り巻く様々な問題について唯一語り合える友人となっていったのでした。そんな二人の前には「A市とC町の統合を成功させよう」という垂れ幕がかかっていて、話題は自然とその方へ傾きます。和人はネット上で統合反対の書き込みが多くなされていること、統合反対派の運営するサイトも存在することを聡美に知らせます。やがて聡美は公衆トイレに統合反対のチラシが置かれているのを見つけ、スーパーの掲示板にも統合反対の貼り紙を多く見つけます。実家で三十年前のA市の職員録を見つけると、ある時期C町の者が多く職員として採用されていることもを知ります。和人にそれを知らせると、和人はC町出身の弓田という市長の時代と、統合の話が出た5年前と、職員交流制度が始まった最近の3度に渡ってC町の者がA市の職員に多く採用され、現在そうした職員はA町の市役所の主要な部署に配置されていることを聡美に教えます。そんなある日、聡美は久しぶりに高校の同級生との飲み会に参加し、そこで統合に反対すると、参加者全員から一斉に責められます。帰りに和人の部屋に寄ると、それは落書き事件の影響だろうと教えてくれます。落書き事件とは、少年サッカーでA市とC町のチームが決勝戦で当たり、その際、微妙な判定でA市のチームが逆転負けした後、審判が買収されていたという噂が広まり、A市にC町を中傷する落書きが出現し始め、市は解決策として、C町の実態や悪口には何の根拠も無いことを、子どもには学校で、大人は会社ごとに市役所から専門の講師がやって来て、高齢者は老人会の集まりで徹底的に叩き込んだ結果、落書きがぱったりと止まったという事件でした。その際、市は講師の派遣をコンサルティング会社に委託し、その結果、実績を買われ、コンサルの社長がA市の副市長に抜擢されたのでした。そして聡美は先日飲み会で一緒だった同級生との軋轢を修復するため、彼らが出店するという「統合推進フェスティバル」に参加します。やがて、周囲の鋪道にたむろする人々が現れ出しました。彼らの顔ぶれは多彩でしたが、皆、統合推進のゆるキャラである「合わサルちゃん」のお面を着けていて、そのお面は目・耳・口がすべて、イラストの「手」によって塞がれていました。そして正午になると、彼らは一斉に会場の周りを、時計回りとは逆に歩き出し、「時を巻き戻そう!」「統合表明前のA市へ!」「立ち止まって考えてみよう!」と方々で声を上げ始めました。聡美が和人に電話すると、和人はそれは「お散歩デモ」だと教えてくれるのでした‥‥。
『戦争研修』では、舞坂町の役人で、残業で税金の滞納者を訪れている私は、隣接する森見町が呼び掛けた四町合同の戦争事業実務研修に参加することになります。戦争事業というのは、隣接する自治体に“交流イベント”という名の戦争を仕掛け、それによって経済の活性化を促すというもので、国が5割、県が4割の費用を負担してくれるというものでした。私は研修で森見町の役人である杉田さんと知り合いますが、しばらくして公約として戦争による町の活性化を公約とする杉田さんの父が森見町の新町長に当選します。私は杉田さんが森見町によりわが町へ送られた諜報員であることを知り、彼の敵として戦争を迎える覚悟をするのでした。
これまでの三崎さんの小説と同じく、ありえない設定の中で動く人物たちをリアルに描写してくれていて、今回も一気に読み終えてしまいました。なお『逆回りのお散歩』の詳しいあらすじは、私のサイト「Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)」の「Favorite Novels」の「三崎亜記」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
さて、三崎亜記さんの'12年作品『逆回りのお散歩』を読みました。長編『逆回りのお散歩』と短編『戦争研修』が収められた本です。
『逆回りのお散歩』では、高校の弁論大会で出会い、親しくなった聡美と和人が久しぶりにA市で再会します。聡美はB市の小さな会社で事務員をしていると言い、和人は首都での有名な食品メーカーを辞め、地元に帰ってきたと言います。高校の弁論大会で知り合った彼らは、自分たちを取り巻く様々な問題について唯一語り合える友人となっていったのでした。そんな二人の前には「A市とC町の統合を成功させよう」という垂れ幕がかかっていて、話題は自然とその方へ傾きます。和人はネット上で統合反対の書き込みが多くなされていること、統合反対派の運営するサイトも存在することを聡美に知らせます。やがて聡美は公衆トイレに統合反対のチラシが置かれているのを見つけ、スーパーの掲示板にも統合反対の貼り紙を多く見つけます。実家で三十年前のA市の職員録を見つけると、ある時期C町の者が多く職員として採用されていることもを知ります。和人にそれを知らせると、和人はC町出身の弓田という市長の時代と、統合の話が出た5年前と、職員交流制度が始まった最近の3度に渡ってC町の者がA市の職員に多く採用され、現在そうした職員はA町の市役所の主要な部署に配置されていることを聡美に教えます。そんなある日、聡美は久しぶりに高校の同級生との飲み会に参加し、そこで統合に反対すると、参加者全員から一斉に責められます。帰りに和人の部屋に寄ると、それは落書き事件の影響だろうと教えてくれます。落書き事件とは、少年サッカーでA市とC町のチームが決勝戦で当たり、その際、微妙な判定でA市のチームが逆転負けした後、審判が買収されていたという噂が広まり、A市にC町を中傷する落書きが出現し始め、市は解決策として、C町の実態や悪口には何の根拠も無いことを、子どもには学校で、大人は会社ごとに市役所から専門の講師がやって来て、高齢者は老人会の集まりで徹底的に叩き込んだ結果、落書きがぱったりと止まったという事件でした。その際、市は講師の派遣をコンサルティング会社に委託し、その結果、実績を買われ、コンサルの社長がA市の副市長に抜擢されたのでした。そして聡美は先日飲み会で一緒だった同級生との軋轢を修復するため、彼らが出店するという「統合推進フェスティバル」に参加します。やがて、周囲の鋪道にたむろする人々が現れ出しました。彼らの顔ぶれは多彩でしたが、皆、統合推進のゆるキャラである「合わサルちゃん」のお面を着けていて、そのお面は目・耳・口がすべて、イラストの「手」によって塞がれていました。そして正午になると、彼らは一斉に会場の周りを、時計回りとは逆に歩き出し、「時を巻き戻そう!」「統合表明前のA市へ!」「立ち止まって考えてみよう!」と方々で声を上げ始めました。聡美が和人に電話すると、和人はそれは「お散歩デモ」だと教えてくれるのでした‥‥。
『戦争研修』では、舞坂町の役人で、残業で税金の滞納者を訪れている私は、隣接する森見町が呼び掛けた四町合同の戦争事業実務研修に参加することになります。戦争事業というのは、隣接する自治体に“交流イベント”という名の戦争を仕掛け、それによって経済の活性化を促すというもので、国が5割、県が4割の費用を負担してくれるというものでした。私は研修で森見町の役人である杉田さんと知り合いますが、しばらくして公約として戦争による町の活性化を公約とする杉田さんの父が森見町の新町長に当選します。私は杉田さんが森見町によりわが町へ送られた諜報員であることを知り、彼の敵として戦争を迎える覚悟をするのでした。
これまでの三崎さんの小説と同じく、ありえない設定の中で動く人物たちをリアルに描写してくれていて、今回も一気に読み終えてしまいました。なお『逆回りのお散歩』の詳しいあらすじは、私のサイト「Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)」の「Favorite Novels」の「三崎亜記」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)