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寒い日の次は30℃近い蒸し暑さ。この秋は、気温の変化が大きい。高山では、秋が深まり紅葉の話題もしきりに聞こえてくる。富士山の初冠雪もきのう 報じられた。そう言えば太宰治の『富嶽百景』の甲州御坂峠から見た富士の雪景色のシーンが印象的だ。
「お客さん!起きて見よ!」かん高い声である朝、茶店の外で、娘さんが
絶叫したので、私はしぶしぶ起きて、廊下へ出て見た。娘さんは興奮して
顔をまっかにしていた。だまって空を指さした。見ると雪。はっと思った。
富士に雪が降ったのだ。山頂がまっしろに、光りかがやいていた。御坂の
富士もばかにできないぞと思った。
寒暖をくり返しながら秋は深まっていく。ひともとの白萩が咲いた。紅い萩が咲き競っているなかで、白萩は珍しい。その上ひときは気品に富んでいる。ふと山の初冠雪を連想した。
白萩の波に紅さす一枝あり 永井東門居