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母袋集落から二ッ森登山口の案内看板が新しくなっていた。以前は和牛育成センターが目印であったが、大きく二ッ森登山口と書かれ、その脇にはニグラの苑の表示がある。荷鞍は、二ッ森の姿が馬に付ける鞍に似ていることから、荷鞍山と地元では呼ばれている。そう言われてみれば、麓から見上げる二ッ森は、荷鞍に似ている。馬車を引かせる馬のいなくなったので、この呼び名が通じる世代はどんどん少なくなっている。
二ッ森(標高695m)は双耳峰であるが、登っていくと北峰の手前に瘤のような岩がある。地元ではこの岩を息子森とよび、双耳が父母で、この山は家族を表現している。麓には広い放牧場があり、ここで尾花沢牛が肥育されている。冬はこの放牧場の雪の上をあるいて、登山道のでるが、牛舎の駐車場をお借りして車をとめて登山口へ向かう。雪が少なく、どんな状態か心配であったが、1メートルほどの雪であった。餌やりに牛舎へ来ている人は、気さくにどちらの山に登るのか、と訊ねてきた。我々の会では、急峻な北峰には挑んたことはないが、地元ではこちらに登る人もあるらしい。
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昨夜から明け方に降った雪が、山の春を遅らせている。カンジキを履いて登るが、牧場歩きを含めて、頂上までほぼ1時間30分ほどの行程であった。参加者は5名、内男性2名。参加者は元気な人ばかりで、ラッセルを交代しながら、頂上へ向かう。雪が少ないため、ブッシュがしばしば前を遮る。鞍部から頂上までは20分ほどの登りであるが、傾斜は急である。振り返ると、北峰の鋭鋒が眼前に視えている。新雪の下が堅雪となっているため、ステップがきりやすく心拍数も許容範囲のうちに頂上へ着く。さすがに、うっすらとかいた汗の、頂上の冷たい風が、急速に身体を冷やしていく。最初は心地よいが、寒さを感じて記念撮影もそこそこに下山。下りになると、斜面が急にかじるため、アイゼンを履いて安全を図る。
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下山は牧場まで30分ほど。風がやわらぎ、たっぷりと春の陽ざしふりそそぐ。そのもとで弁当を食べながら、山の話に会話が弾む。山登りを終えて、温泉でリラックスすると誰もが爽快感を味わえる。それは運動一般にも言えることだが、一番は肺での換気量を増やし、換気効率を高める。これは身体の中の古い酸素吐きだし、新鮮な空気を取り込めるからだ。二つ目は、心臓の筋肉の働きをよくし、血液の循環効率を高める。つまり身体の隅々まで必要な酸素を運ぶことができる。三つめは、筋肉組織の代謝能力を高める。
こうして登山について考えると、肺や心臓の働きをよくし、筋肉の働きを向上させ、体脂肪を減少させて成人病のリスクを少なくしてくれる、いいことづくめの運動である。だが、急な坂道での転倒、滑落、天候の急変、道迷いなどのリスクが伴っていることも十分に考える必要がある。メンバー一人一人の安全意識を持つことの大切さであることは、改めて言うまでもない。
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