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朝、ベランダから南を望むと、大平山が朝日を受けてその穏やかな全貌を見せていた。数日、小雪がちらついて山の姿を隠していたので、こんな朝の光景を見ると心が落ち着く。麓には春の霞に見える薄い霧がたちこめている。ふと頭をよぎるのは、陶淵明の詩の言葉である。
歳開けてたちまち五日
吾が生行くゆく帰休せんとす
之を念えば中懐を動がし
辰に及んでこの游を為す
帰休は終焉を意味し、中懐は心の内。陶淵明にとって、この游とは、景色のよい場所に、友人と座し、酒を酌み交わすことである。今朝のこの時間を逃すことなく楽しめ、明日をあてにしてはならない。
春の花や緑の美しさを待っていることはできない。雪のなかに静かに眠る木々たちのかすかな呼吸。そのなかにも、生を歓びとすることが可能である。朝日を受ける木々たちもまた、明日を待たずにこの瞬間を楽しむことを促されているような気がする。
気温が上がって寒中としては不思議な春のような日和ですね。