佐藤一斉の『言志四録』を携えて、ヨーロッパを旅行した人がいる。空港で融通の利かないボーイとやりとりしながら、少し時間が空くと、その本を開いて一斉の警句を味わう。日本の伝統が、西洋の文明のなかで、明瞭な姿を見せる瞬間だ。
人間の体力から発する血気では、老人と青年では大きな違いはあるが、精神から迸る志気では、老人と青年にさほどの違いはない。それゆえに、老人が勉学するときは、志気をはげまして青年に負けてはならない。青年は今日学ばずとも先に明日があるが、老人には取り返す日は来ない。
謂うこと勿れ、今日学ばずして明日ありと
謂うこと勿れ、今年学ばずして明年ありと
日月逝きぬ。歳、我と延びず
嗚呼、老いたり、是れ誰の愆ぞや
『言志四録』を開いて、小島直記が記すところを確認する。高齢になって学ぼうとする佐藤一斉の志にうたれる。到底、この学者の足元にさえ及ぶことはないが、年老いてからの学びをわずかでも心掛けたい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます