寺町通からアーケードが始まる三条通。そのすぐ近くにあるのが、トレンチコートの専門店「ザ・ダヴィンチコート1893」です。
このお店の名は、レオナルドダヴィンチが考案した自動織機をリスペクトしたもの。
1893(明治26年)の創業以来、1888年に英国で発明された斜文織という2.5㎝四方に経糸緯糸を合計270本も有する生地を、ずっと織り続ける会社です。
その優れた技術による生地を使ったトレンチコートを作るのが、このお店です。
第一次世界大戦の英国軍が、寒い戦地で着る防水型の軍用コートを起源とするトレンチコート。そもそもトレンチとは塹壕(ざんごう)のことで、その厳しい状況にも耐えられるコートとして開発されたそう。その実用性の高さだけでなく、スタイリッシュなフォルムから、1930年代以降は、秋冬のファッションに欠かせないコートとして定着しました。
「トレンチコートってかっこいいよね~」とミモロも憧れるコートです。
店内には、定番のトレンチコートとステンカラーのものが、いろいろなカラーバリエーションや丈の異なるタイプなどが並んでいます。
「いらっしゃいませ~」と、ミモロを迎えてくださったのは、オーナーである野原さん。
「あの~ここのトレンチコートについて教えてください~」とミモロはお願いしました。
「このお店で扱うコートの生地は、エジプトギザ綿と米国スーピマ綿で、一般では流通してない極細70番手を国内の工場で撚って双糸にしたもの。そしてその糸を1901年にドイツインダスレンの技法で1本1本をむらなく染める技法を行います」と。
「つまり先染めの生地ってことね~」と、織物には結構詳しいミモロ。
「そう、ですから濡れても色落ちせず、また日光にもとても強いんです。これはコート生地には必須条件ですね。でも、糸の色合わせが大変難しく高度な技術が必要なんです」と。
その糸を織るのは、ベルギー西部のイーパルという町の世界最大の織機メーカーPICANOLの織機。それを日本で最初に稼働させたのもこの会社だそう。今やその織機を使う工場は、他になく、その織機を使えるのは、もはや世界でもこの会社だけだそう。
「でも、そうような高度な技術で作るからこそ、本当に美しい光沢をもちつつ、強さを兼ね備える生地(ギャバジン)ができるんですよ」と。
実は、その生地は、アメリカや英国のプレステージブランドにも高く評価されているのだそう。
「もしかして、あの有名なトレンチコートのブランドの生地もここのものなんですか?」とミモロ。「・・・」と口を閉ざす野原さん。
「あの~縫製は、日本で行っているんですか?」とミモロ。「はい、もちろん…日本の縫製の技術の高さは類を見ません」と。
トレンチコートには、30近いパーツが使われ、それを丁寧に組み立ててゆく技術は、長年、戦後のプレステージブランドを支えた秋田の名工が行っています。
「トレンチコートってすごいね~」と改めて思うミモロです。
今、若い人の間でもトレンチコートは人気のアイテム。でも、実は、その需要は、バブル時代の昭和をピークに減少傾向に。今やその需要はピーク時の10分の1ほどになっているそう。その原因は、コートの多様化。ダウンや化学繊維の軽く保温性の高いコートへの人々の志向が変わったことにあります。「確かにしっかりした素材のトレンチコートって、ちょっと重いよね~」とミモロ。
また、ファッションのカジュアル化も、さらにトレンチコート離れに拍車をかけることに。
そこで、長年、本物のトレンチコートの生地を織り続けた会社が、フォクトリーブランドとして、2018年にこのトレンチコートの専門店を作ったのでした。
「トレンチコートって、長い間大切に着るものなんでしょ?」とミモロ。
「そうですね~大切に着れば、一生着られますよ~」と。本物だからこそ、それが可能になるのです。
以前は、綿100%素材のものが主流でしたが、今は、しわになりにくく、また軽量なポリエステルとの混紡の素材も登場。
「それもすごく研究して、作られた素材なんです」と野原さん。
本物のトレンチコートの素材も進化しているのだそう。
「こういうコート欲しいなぁ~」とミモロも憧れる本物のトレンチコート。
「う~ミモロちゃんには、ちょっと大きいですね~」とお店にいらっしゃる野原さん。
「トレンチコートにこだわる男性客は、オーダーでもおつくりになる方もいらっしゃいます。女性のオーダーもしていますが、女性のお客様は、すぐに召されたいので、オーダーをなさる方はそれほど多くありません」と。オーダーには1か月以上かかるため、女性は待てないよう…。
「でも、シルク素材の生地もありますので、とても着心地のいいコートができるんですよ~」と。
お店に並ぶトレンチコートは、5万円台からと、海外のプレステージブランドに比べかなりお手頃。
「トレンチコートって大人の人に似合うのよ~。トレンチコートが似合う大人になりたい…」とミモロ。
*「ザ・ダヴィンチコート1893」の詳しい情報はホームページで
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