友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

名演『冬のライオン』

2010年02月04日 22時41分02秒 | Weblog
 立春の今日は寒い日だった。名演の例会で平幹二郎主演の『冬のライオン』を観た。ライオンは勇者を象徴するが、冬は何を表しているのかと興味を持った。演劇から察すると、「吠えることを忘れた」ということらしい。12世紀初め、イングランド王国の礎を築いたヘンリー2世の物語である。歴史劇でありながら事業の継承、家族の血、男女の愛が絡み合う3時間に及ぶ長大な演劇である。

 ヘンリー2世は50歳で、王位を3人の息子の誰に継がせようかで頭を抱えている。上のリチャードは勇敢だが母親にべったりの子だ。真ん中は頭はよいが僧侶になっている。一番下の子は可愛いけれど、まだ子どもで思慮に欠ける。けれども、ヘンリー2世はこの一番下の子に王位を継がせようと、画策を練る。王妃はヘンリー2世が20歳の時、「余りにも美しく光り輝いていた」11歳年上の女性だ。男には目がないようで、彼女は前フランス王の妃であったけれど離婚されていた。子どもたちを唆して王へ反逆した罪で幽閉されているが、自由の身になることとヘンリー2世への復讐を支えに生きている。

 子どもたちはヘンリー2世が次々と愛人をつくるので、父親への愛情を抱いていない。王位継承者になるために画策をしている。ヘンリー2世の現在の愛人はフランスの王女で、その異母弟である現フランス王がクリスマスに招かれてヘンリー2世の王宮にやってくる。王とその妃、そして3人の王子、愛人となったフランスの王女、奪われた領土を取り返したいと機会を狙うフランス王である弟、7人がそれぞれに愛憎をぶつけ合い、権力を握ろうと画策する。とてつもなく醜いのに、とてつもなく真摯で、とてつもなく人間の真実に迫っている。

 王は自らの力を後世に残そうとし、王妃は幽閉した王への復讐に燃えながら王への愛情も捨てきれない。王子たちは王位継承を求めて父親とあるいは兄弟間で争いながら、憎みきれない。フランス王はヘンリー家の争いを利用しようと巧に動くが勝ち取れない。異母姉だけが王を信じ愛する。けれど、息子たちを信用できないヘンリー2世から結婚を申し込まれ、息子を産んでくれと言われると、わが子を助けるためには息子たちを殺すか閉じ込めるかしなくてはならないとヘンリー2世に迫る。

 なるほど、愛情も地位もあらゆるものを手に入れようなどということは虫が良すぎるということだ。何かを手に入れようとすれば何かを犠牲にしなくてはならない。50歳でヘンリー2世は自分の行く末を考えていたけれど、人が手に入れられるものなどは知れている。歴史は上の息子が後を継ぎ、以後何百年と続くイングランド王国となるのだけれど、息子たちに裏切られたヘンリー2世がそれを知る由はない。テレビニュースで、民主党の小沢一郎幹事長は不起訴となったことや、横綱朝青龍は引退したことを報じていた。なんとも後味の悪い結果だと私はブツブツ言いながら酒を飲む。

 そして、最後に王は何を手に入れたのだろうかと考える。
コメント (1)
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