友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

ノーベル文学賞の『白檀の刑』

2013年02月24日 19時12分49秒 | Weblog

 友だちがブログで、ノーベル文学賞を受賞した中国の作家のことを書いていた。先日、彼の家にお茶を飲みに行った時、その作家の本を「貸してもらえないか」と聞いた。彼は奥から文庫本を2冊持ってきった。「へぇー、文庫本になっているのか。それにしても厚いね」と言うと、「上下になっているけど、結構読めるよ」と笑う。「この人のおかげで、村上春樹が受賞出来なかったのだよね」と言うと、「村上春樹は翻訳が多いじゃーない。創作性に欠ける気がする」と今度は不満そうに言う。

 次女のダンナが村上春樹を評価していたのに、私は1冊も読んでいなかったので、話が出来なかった。友だちがそんな風に指摘しても、「そうなのか」としか言えなかった。日本の男性の小説家を読んでみたいという気持ちがなぜ湧いてこないのか、自分でも分からない。芥川賞を貰った西村賢太さんや2年後に受賞した田中慎弥さんの受賞作は読んだ。新聞の人生相談で面白いなと思っていたら、「その人の本なら持っているわよ」と言うので借りて読んだ車谷長吉さんのものくらいしか読んでいない。

 莫言さんの『白檀の刑』は心配とは裏腹に一気に読めた。物語は清国の末期が舞台で、読み進むうちに「義和団の乱」の話かと分かってくるから、中国の小説なのになぜか知っているような気がしてくる。作者の「莫」は、夢を食べるバクにつながっているかと思ったけれど、どうも莫大ということなのかも知れない。『三国志』や『水滸伝』といった中国の歴史小説に近いのかも知れないとも思った。とは言っても、私は横山光輝さんのマンガでしか知らない不埒者である。

 このテンポの良さは何なのかと思う。日本なら講談でも聞くような感じかも知れない。歴史上の人物が大活躍する、そんな展開だ。描写も誠に細かい。これでもかこれでもかと延々と続くのに、どんどん引き込まれてしまう。けれどもぞっーとする。表題にあるように「刑」の話だからだ。「上」の最後は、「凌遅の刑」の場面が26ページにわたって書かれている。殺さずに肉を一片ずつ切り取っていくのだ。5百刀目で息絶えるまで細かく書き綴られていて、気持ちが悪くなってくる。それが作者の狙いなのかも知れないが、中国にはよくもこんな残酷な刑があったものだ。

 さあーて、どんな展開になるのかと思いながら読み進めているが、早く結末が知りたいな、それでいて、結末などは死刑の執行以外にないではないか、そんな思いが絡み合っている。

コメント
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