一週間ほど前、中国・国家統計局が、2020年に行った国勢調査の結果、中国の人口が14億1178万人だったと発表した。前年の14億5万人から1173万人の増加である。増加にはなったものの、前回調査の2010年からの年平均増加率は0.53%と、その前の10年の0.57%と比べて鈍化し、1953年以来の低水準にとどまったということだ。中でも、65歳以上の人口比率は高齢化率と呼ばれ、中国は今年にも「高齢社会」(高齢化率14%超)になる可能性があり、「高齢化社会」(同7%超)から「高齢社会」になるまでの期間は21年間で、欧米の40~50年間、日本の25年間より短いことになるらしい。また昨年の新生児は1200万人で、前年の1465万人から2割弱の落ち込みとなった。コロナ禍を克服したとされる中国ではあるが、1949年の建国以来、最大の落ち込み幅だそうだ。一人っ子政策は2016年に廃止され、全ての夫婦が子供2人まで持つことが認められたにもかかわらず、出生数は増えていない。
もっとも、中国が公式発表する統計数値を信用する人はいない。青山瑠妙・早稲田大学教授によると、実際の総人口は調査結果より1億ないし2億人少ないとする見方もあるそうだ(逆に、一人っ子政策のせいで、届出されていない人が1億や2億の単位で存在すると聞いたことがある)。香港紙・明報(電子版)などは、統計局がこれまでに公表した2006~20年の出生数の総計が約2億3900万人にしかならず、国勢調査が示した14歳以下の人口と比べて1400万人余りの差が生じて辻褄が合わないと、水増し疑惑を報じた。他方、米ブルームバーグ紙は大人の対応で、「中国の総人口は伸びが鈍化した」 「高齢化とともに都市化も進み、世界2位の経済大国で人口動態が変わりつつある」 と抑制的に報じた。
もともと4月初旬に公表される予定だったのに、その後に一段の時間が必要になったと説明されたものだから、英フィナンシャル・タイムズ紙などは関係筋の話として、中国の人口が数十年ぶりのマイナスになると報道するなど、期待は否が応にも高まったのだった(笑)。そのため、統計局は4月末に、人口は昨年増えたが、国勢調査で詳細を明らかにすると、簡単な声明を発表して釘を刺した。しかし、環球時報(英語版)は4月末に、中国の人口が2022年にもピークに達し、減少に転じるという専門家の分析を報じた。政府系シンクタンクの中国社会科学院は2019年1月に「早くて2027年」と試算していたので、5年ほど前倒しになる可能性が出て来た。
米ニューヨーク・タイムズ紙は「これは世界第2位の経済大国の成長を妨げる可能性がある」と指摘し、「中国は先進国並みの高齢化の難題に直面しているのに、平均所得は米国などと比べると遥かに低い」として、「中国は豊かになることなく老いている(未富先老)」と結論づける。まあ、他人の不幸は蜜の味・・・なのは分かるが、英フィナンシャル・タイムズ紙は、「人口が高齢化しても中国の台頭は止まらない」と題する記事で、「ナポレオンの欧州征服に先んじて、フランスでは18世紀に人口が急増した。20世紀に入る頃には、フランスの人口はドイツや英国に抜かれ、フランスのエリート層にとって正当な不安の源泉になった」といった歴史的事実に触れながら、「規模が縮小し、高齢化する人口は、21世紀には同じ暗澹たる意味合いを持たないかもしれない」と、冷静な見方を示す。その理由は、「未来の大国間の紛争が大規模な陸上戦で決まる公算は小さい」 「ロボット工学や人工知能(AI)といった分野で最先端の能力を持つ。14億人の人口――今世紀半ばまでは緩やかにしか減少しない――を抱える中国は、マンパワーも不足しない」からだという。本当の課題となるのは、「中国の人口の規模ではなく、その構造だ。2040年までに、中国国民の30%前後が60歳以上になる。少なくなる生産年齢人口がより多くの高齢者を支えなければならず、経済成長が鈍る」と指摘する。これだけの人口を抱えるから、「中国経済は全体的な規模で簡単に米国を追い抜く」だろうが、「中国は永遠に、米国の人口1人当たりの富のレベルに到達しないかもしれない」と予想する。社会保障制度や医療体制で問題を抱える中国には重い課題だ。
いずれにしても、自由であることより安定した社会であることを選び、小康社会で年々豊かになることを実感させるという、これまで中国共産党の統治の正当性を担保してきた条件が揺るぎかねない、由々しき事態である。2015年に、中所得国の罠に陥るのを避けるためであろう中国は、産業の高度化のため重要技術の国産化を目指す「中国製造2025」を立ち上げた。「魚を与えれば一日の飢えをしのげるが、魚の釣り方を教えれば一生の食を満たせる」という中国古典の教えがあるが(田中角栄元首相の演説より)、時間をかけて技術を育てる悠長なことが苦手な中国人は欲しい技術を、あるいは会社ごと、カネで買い、買えない技術はなりふり構わず窃取して来た。グレアム・アリソン教授も、『米中戦争前夜』の中で、「ある中国人の同僚によると、アメリカではR&Dと呼ばれるものが、中国ではRD&T(TはTheftの意)と理解されている」と言われていた。傍迷惑な隣人であることは、これからも変わりそうにないのだろうか。
もっとも、中国が公式発表する統計数値を信用する人はいない。青山瑠妙・早稲田大学教授によると、実際の総人口は調査結果より1億ないし2億人少ないとする見方もあるそうだ(逆に、一人っ子政策のせいで、届出されていない人が1億や2億の単位で存在すると聞いたことがある)。香港紙・明報(電子版)などは、統計局がこれまでに公表した2006~20年の出生数の総計が約2億3900万人にしかならず、国勢調査が示した14歳以下の人口と比べて1400万人余りの差が生じて辻褄が合わないと、水増し疑惑を報じた。他方、米ブルームバーグ紙は大人の対応で、「中国の総人口は伸びが鈍化した」 「高齢化とともに都市化も進み、世界2位の経済大国で人口動態が変わりつつある」 と抑制的に報じた。
もともと4月初旬に公表される予定だったのに、その後に一段の時間が必要になったと説明されたものだから、英フィナンシャル・タイムズ紙などは関係筋の話として、中国の人口が数十年ぶりのマイナスになると報道するなど、期待は否が応にも高まったのだった(笑)。そのため、統計局は4月末に、人口は昨年増えたが、国勢調査で詳細を明らかにすると、簡単な声明を発表して釘を刺した。しかし、環球時報(英語版)は4月末に、中国の人口が2022年にもピークに達し、減少に転じるという専門家の分析を報じた。政府系シンクタンクの中国社会科学院は2019年1月に「早くて2027年」と試算していたので、5年ほど前倒しになる可能性が出て来た。
米ニューヨーク・タイムズ紙は「これは世界第2位の経済大国の成長を妨げる可能性がある」と指摘し、「中国は先進国並みの高齢化の難題に直面しているのに、平均所得は米国などと比べると遥かに低い」として、「中国は豊かになることなく老いている(未富先老)」と結論づける。まあ、他人の不幸は蜜の味・・・なのは分かるが、英フィナンシャル・タイムズ紙は、「人口が高齢化しても中国の台頭は止まらない」と題する記事で、「ナポレオンの欧州征服に先んじて、フランスでは18世紀に人口が急増した。20世紀に入る頃には、フランスの人口はドイツや英国に抜かれ、フランスのエリート層にとって正当な不安の源泉になった」といった歴史的事実に触れながら、「規模が縮小し、高齢化する人口は、21世紀には同じ暗澹たる意味合いを持たないかもしれない」と、冷静な見方を示す。その理由は、「未来の大国間の紛争が大規模な陸上戦で決まる公算は小さい」 「ロボット工学や人工知能(AI)といった分野で最先端の能力を持つ。14億人の人口――今世紀半ばまでは緩やかにしか減少しない――を抱える中国は、マンパワーも不足しない」からだという。本当の課題となるのは、「中国の人口の規模ではなく、その構造だ。2040年までに、中国国民の30%前後が60歳以上になる。少なくなる生産年齢人口がより多くの高齢者を支えなければならず、経済成長が鈍る」と指摘する。これだけの人口を抱えるから、「中国経済は全体的な規模で簡単に米国を追い抜く」だろうが、「中国は永遠に、米国の人口1人当たりの富のレベルに到達しないかもしれない」と予想する。社会保障制度や医療体制で問題を抱える中国には重い課題だ。
いずれにしても、自由であることより安定した社会であることを選び、小康社会で年々豊かになることを実感させるという、これまで中国共産党の統治の正当性を担保してきた条件が揺るぎかねない、由々しき事態である。2015年に、中所得国の罠に陥るのを避けるためであろう中国は、産業の高度化のため重要技術の国産化を目指す「中国製造2025」を立ち上げた。「魚を与えれば一日の飢えをしのげるが、魚の釣り方を教えれば一生の食を満たせる」という中国古典の教えがあるが(田中角栄元首相の演説より)、時間をかけて技術を育てる悠長なことが苦手な中国人は欲しい技術を、あるいは会社ごと、カネで買い、買えない技術はなりふり構わず窃取して来た。グレアム・アリソン教授も、『米中戦争前夜』の中で、「ある中国人の同僚によると、アメリカではR&Dと呼ばれるものが、中国ではRD&T(TはTheftの意)と理解されている」と言われていた。傍迷惑な隣人であることは、これからも変わりそうにないのだろうか。
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