風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

エアーズ・ロック

2017-11-07 00:42:10 | 永遠の旅人
 最近は先住民アボリジニの呼び方にならいウルルと呼ばれることが多いが、その世界で二番目に巨大な(一番はやはりオーストラリアで、西オーストラリア州にあるマウント・オーガスタス)一枚岩への登山が、再来年10月26日から禁止されることが決まったらしい。
 ご存知の通り、オーストラリア大陸と言うべきか巨大な島と言うべきか、そのど真ん中にヘソのように鎮座するウルルは、古来、アボリジニにとっての聖地で、ネイティブ・アメリカンに対するのと同様、地元の少数民族の権利を尊重する時代の風潮の中で、周辺から商業施設は蹴散らされ、ホテルも随分離れたところに追いやられるなど、規制がどんどん厳しくなっているのは聞いていたが、いよいよ・・・という思いだ。
 シドニーに駐在していた2009年春、既に帰任することが決まって、最後の旅行に、ひと通りフライト(カンタスのみの運行で、やたら高額だったのは特別価格なのだろう)やホテルやレンタカーを予約したところ、あれよあれよという間に豚インフル(swine fluと呼ばれていた)が流行り始め、人が集まる観光地だからどうしたものかと思い悩んで、相談した現地人の同僚(奥様が医療関係に従事されていた)から手洗いの消毒液を分けて貰い、慎重に慎重をかさねて決行したのが、今となっては懐かしい。当時、下の子が小学校低学年だったので、山頂まで往復するのに2時間以上かかると聞いて諦めたのだったが、逃した魚は大きい・・・というのが正直な気持ちだ。
 あたりは見渡す限りの砂漠地帯で、いくつかのホテルの灯り以外に何もなく、漆黒の闇に満点の星空は、アボリジニではなくとも神聖な気持ちになったものだった。昼の間にウルルや近所のカタジュタなどの巨大な奇岩の間をさんざん歩き回って、粘土質の赤土に薄っすらと草が生える程度の生命感の無さを思い知っていたものだから(それはおよそこの世=地球とは思えない、まるで火星でも徘徊しているような錯覚に囚われた)、なおのこと不思議な感覚に包まれたのだった。
 懐かしい写真をひっぱり出してみた。中央の登山道に延々と手すりの鎖が張られ、その先の空との境界に白い点のように見えるのは人なのだが、その大きさが分かるだろうか。
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