風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

追悼:岡本行夫さん

2020-05-08 21:53:39 | 日々の生活
 またしても、新型コロナウイルスの、私にとっては心から惜しまれる犠牲者が出た。岡本行夫さん、享年74。4月24日に亡くなったという。既に二週間、なんとひっそりとこの世を去られたことだろう・・・氏のお人柄が偲ばれる。
 元・外交官で外交評論家の岡本行夫さんとは、何の縁もゆかりもない。失礼ながら著作を読んだこともない。強いて言えば、卒業記念に外交官試験を受験し(勉強しなかったので予定通り合格せず)、在学中は同じく元・外交官の加瀬俊一さんの著作に親しみ、というように、外交官への一方的な憧れを抱いていただけのことだ。もっとも元・外交官と言っても、多士済々、いろいろな方がおられる。岡本行夫さんの素晴らしさは、言ってみれば、保守系の代表的日刊紙・産経新聞の「正論」執筆メンバーとして保守の方々を満足させる論考を寄せられるとともに、日本的な意味でのリベラルな(つまりは反体制の)番組の代表格であるTBS「サンデーモーニング」の解説者にも名を連ね、リベラル派をも納得させる議論を展開されていたところにあるように思う(笑)。君子豹変ではない。右顧左眄でもない。背筋にぴんと一本筋が通って、いずれをも納得させる魅力があるのだ。その朴訥とした語りからは、ただの評論家にとどまらない、現場感覚の確からしさと、透徹した思考の奥深さが伝わって来る。
 過去にセミナーやシンポジウムで何度か直接(という意味は、メディアを介さずという意)お話を伺う機会があり、地球環境に関しては驚くほどラディカルで、私にはちょっと付いて行けないところがあったし、歴史認識に関してはリベラルで、意外に思ったものだが、保守派はつい戦前の日本の立場を回復するべくリビジョニスト的な主張を世界に向けて発信したがるところ、岡本さんは「日本が挑発しないことだ」と慎重で、リアリストとしての現実感覚には感服したものだった。志村けんさん、岡江久美子さんに続き、もうあの快刀乱麻を断つとでもいうべき時事評論を伺えないと思うと、残念で哀しくて仕方ない。
 心よりご冥福をお祈りし、合唱。


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