昨日の自民党総裁選で、石破茂さんが、五度目の正直で新・総裁に選出された。統一教会との癒着や裏金問題などで、自民党への信頼が大きく揺らぐ中、解散・総選挙を視野に、自民党再生を期する今回のような総裁選で勝利されたのは、石破さんのようなお立場の方にはとても象徴的だったように思う。かつて「自民党をぶっ壊す」と叫んだ小泉純一郎さんに通じるものがあるからだ。もっとも、党内では人気がないと噂される石破さんに支持が集まったことには選挙目当ての自民党議員のあざとさを感じないではないが、そんな政治力学とは言え、私のような庶民には言わば自浄作用が働いたようにも見え、こうしたバランス感覚もまた自民党の強さの表れのように思う。総裁選は党員・党友の間での話だが、石破さんの政治家としての信念は、国民一般の中にも信じる人が多いわけで、期待したいと思う。
それにしても、異例の選挙選だった。表向き派閥解消されていたとはいえ信じる人はいないのに、その重しが外れて九人も立候補に名乗りをあげる乱戦となり、派閥解消を象徴するものとなった。今回は無理でも次かその次に繋がるようにという、将来の総裁候補に名乗りをあげる意味合いがあったのだろう。案の定、時の経過とともに、本命・石破さん、対抗・小泉進次郎さん、大穴・高市早苗さんという三つ巴に絞られ、候補者が九人も出れば議員票が割れるので過半数獲得は難しく、党員・党友の支持を集める石破さんが一回目の投票ではトップ通過するにしても、二位通過の候補が決選投票で勝つと見られていた。ところが蓋を開けたら、終盤での追い上げを報道されていた高市氏が小泉氏を抑えて二位通過するどころか、議員票でも党員票でもトップという異例の展開である。これで決選投票では高市さんが圧勝すると思っていたら、どんでん返しがあった。裏金議員からの推薦が多く、問題に甘いと見られていることと、立民の代表が、共産党から距離を置く野田佳彦さんに決まったことで、右に寄り過ぎる高市さんでは解散・総選挙で中道票を取りこぼすことが懸念されたのだろう。また、岸田首相は周辺に「高市さんだけは応援できない」と話していたとされ、一回目の投票で他候補に流れていた議員票をより多く拾ったのは石破さんで、僅差ながらも逆転勝利した。決選投票前に各5分、計10分の演説の時間が設けられ、石破さんはここで自身について「私は至らぬ者だ」とし「議員生活38年になる。多くの足らざるところがあり、多くの人々の気持ちを傷つけ、いろいろ嫌な思いをした人が多かったかと思う。自らの至らぬ点を心からおわび申し上げる」と率直に頭を下げる場面があり、党内の不人気を多少は払拭する効果があったかもしれない。
奇しくも二年前のこの日は安倍晋三元首相の国葬が執り行われた日で、高市さんにとっては、岸田首相誕生に繋がった総裁選で高市さんを推薦してくれた安倍さんに向けた弔合戦のようなところがあった。日本初の女性首相に、ゴール直前、鼻の差で届かなかったが、勉強家で、岸田さんと違って自らの声で主張できる高市さんにも期待している。
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