風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

こうのとり

2013-08-06 00:40:34 | 日々の生活
 「こうのとり」という、なんとも微笑ましい名称は、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を輸送する無人の宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle、略称: HTV)につけられた愛称です。赤ん坊や幸せといった大切なものを運ぶイメージから命名されたそうですが、見た目は味も素っ気もない、直径4m、全長10m、観光バスが収まるほどの大きさの、円筒形の宇宙船です。昨日、国産大型ロケット「H2B」4号機に搭載されて、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、約15分後には正常に分離され予定軌道に投入されました。順調に行けば、5日間ほどで国際宇宙ステーションに到着するそうです。
 どんなものを輸送するのかと言うと、国際宇宙ステーションの運用に必要な配電装置などの交換品のほか、宇宙放射線の影響を調べるために凍結乾燥させたマウスの精子や、子供たちの教育目的で地上と宇宙とで育ち方の違いを調べるアズキの種などの実験材料、11月以降にISSに滞在する若田光一さんと会話実験を行う小型ロボット「KIROBO」、乾燥ラーメンや山菜おこわなどの食料品や水、衣料など、物資は総計6トンにも達するそうです。
 それはともかく、驚くべきは、国際宇宙ステーションが「こうのとり」をどうやって捕獲するのか、というところです。国際宇宙ステーションと言えば、地上約400km上空の熱圏を、秒速約7.7km(時速27,700km)、地球を約90分で1周するほどの高速で飛行しています。「こうのとり」も、国際宇宙ステーションを追って高速飛行し、接近したところを、ロボットアームの手動操作で捉えられ、ドッキングするのだそうです。想像を絶する世界ですね。
 しかし、広大な宇宙で絶妙のコントロールでランデブーを果たす「こうのとり」も、補給が済むと、用途を終えた実験機器や使用後の衣類などを積み込み、大気圏に再突入して燃やされるという、悲しい使い捨ての運命にあります。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、「こうのとり」の運用を通じて、将来のフリーフライヤーや有人輸送の基盤となる技術の蓄積が可能と説明するように、日本の技術力が宇宙の領域でも発揮されつつあるのは喜ばしい限りで、「こうのとり」としては、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、といったところでしょうか。
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