風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

米露の情報戦

2022-02-18 20:20:21 | 時事放談
 ウクライナ情勢が相変わらず緊迫している。アメリカ政府は、オオカミ少年!?のように、「オオカミが来た」ならぬ「ロシア軍が今にも動く」かのような発言を繰り返し、情勢を煽っているのではないかと疑っていたが、どうもそうではなく、ロシアが偽情報を含めた情報戦を(私たちに届いているか否かは別にして)仕掛けるのに対抗して、機密情報を積極的に機密解除して開示するようにしているようだ。このように、現代の戦争にあっては、情報戦が前哨戦として行われることになるのだろう。
 プーチン氏は大風呂敷を広げて、その実、何が真の狙いなのか、よく分からなかったが、どうやらウクライナを取り戻すことそのものよりも、欧州の安全保障のあり方を見直そうとしていることが明らかになりつつある。最近、ネットで拾い読みした中では、ちょっと古くなるが、ダイヤモンド・オンラインに掲載された下斗米伸夫教授のインタビュー記事が最も説得力があるように思えた(*)。
 下斗米教授は、今の情勢を、「米露間の新しい戦略的予測可能な関係の再構築」「米国とロシアによる、グローバルな核管理や欧州安全保障を含めた国際秩序の作り直し」と見ておられる。
 振返れば昨年6月、バイデン・プーチン両大統領による初の米露首脳会談がジュネーブで開催され、「戦略的安定に関する共同声明」が発表された。この声明の冒頭に、「米露間の緊張が高まる状況でも、戦略的領域における予見可能性の確保、武力紛争のリスクや核戦争の脅威を低減するという共通の目標に関して前進することができる」と記された。8月にはアフガニスタンからの米軍撤退があり、バイデン氏の対中抑止にフォーカスしたい思惑がより明確になった。プーチン氏としては、米中対立が激化する今こそ、(バイデン氏の足元を見透かすように)欧州方面で冷戦崩壊後30年の間に積もった問題を精算しようではないかと提案したとしても不思議ではない。
 感心したのは、下斗米教授によると、昨年10月末、プーチン大統領と世界のロシア専門家との会合(バンダイ会議)があった(下斗米教授も参加された)ということだ。主要なテーマは、今後の米ロ関係を含むロシアと欧米の最悪の関係をどうリセットするか、ということだったそうで、この場でのプーチン氏の思いは、ロシア専門家の口を通して間接的に世界に拡散され、議論の環境をつくり、当然のことながらバイデン氏の耳にも入るだろう。プーチン氏はコワモテに見えて、なかなか芸が細かいと思う(そういう意味では、下斗米教授のお話も、かなりプーチン氏の核心に迫っているはず、とも読める)。
 結論として、下斗米教授は、現実的で望ましいと思うのは「ウクライナのNATO加盟については20年間のモラトリアム期間を置くこと」だと言われる。これは、私も前々回のブログで触れたことだが、ウクライナが自制できるかどうかが決め手だろう(ちょうど台湾が「独立」を言い出さないで「現状維持」を受け入れて自制しているように)。
 情報戦はいつまで続くのか・・・

(*)前編:「ウクライナ緊迫、ロシア研究の第一人者が「軍事侵攻は起こり得る」と考える理由」
       https://diamond.jp/articles/-/295537
   後編:「ウクライナは中国、トルコも絡む「多極ゲーム」?ロシア研究の第一人者が考える“現実解”」
       https://diamond.jp/articles/-/295680
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