かーちゃんはつらいよ

施設入所した18歳そうちゃん(自閉症、最重度知的障害、強度行動障害、てんかん)のかーちゃんが書く雑記。

最終手段

2024年06月08日 19時55分03秒 | みゆみゆとの生活
一昔前までは、そうちゃんレベルの子は早いうちから親から離されて、施設入所になっていた。
人里離れた、窓に格子がある施設。そこで一生を送る。
または、大きくなってから暴れて精神病院に入院し、住所もそこに移して一生を送る。
その生活が安定していた人もいるだろう。
けれど人間的に扱われなかった施設も実際にあった。

今は時代が変わり、「地域移行」の名のもとに入所施設はどんどん減っている。
精神科の長期入院もなかなかさせてもらえない。

地域で安全に過ごさせてあげたいけど、窓に格子があるグループホームは基本的にはない。
職員の配置には限りがあり、たくさんの目で常時見ておくことやマンツーマン対応もできない。

今、特にグループホームへの行政の目は厳しくなっている。
虐待防止の観点から、部屋へ施錠したり窓を開かなくすることは拘束と認定されてしまう。
消防法の壁もある。

そんな中、ホームから「最終手段」として提案されたのは、「鍵付きクレセント錠」。
窓のクレセントを鍵付きのものに変えるというもの。
「これをつけるのは、消防署と市役所に許可をもらってからにさせてください。
それで、もしこれでも無理やり壊して開けてしまうようなら、もううちのグループホームでは無理です。」
前向きな、最後通告。
もちろん了承。祈るような気持ち。
すぐに消防署と市役所には連絡を取ってくれて、やむを得ない処置として許可してもらった。 
この前市役所も呼んで会議しといてよかった。うちのことがよく伝わってるから、話が早い。

「最終手段」は土日に設置することになり、昨日はその前の暫定処置として屋外からの鍵をはめた。
窓の前には棚を置いて、万全の状態に。
久々に安心できた気分だったのだけど。
…そうちゃんの身体能力は想像を超えていた…

昨日夜7時、GPSが脱走を告げた。
慌てて車であとを追う。
向かってる先に以前利用していたデイがあるので、電話して待ち構えてもらうよう依頼。
その時、歩道を歩くそうちゃんを夫が見つけた。
駆け寄って名前を呼んだら…
全速力で走って逃げた!!
遊ばれてるな。
行け、アラフィフ夫!
18歳のカモシカに負けるな夫!
はい、追い付けました。素晴らしい。
デイの職員さんに、「無事捕まえました」とお礼の電話。
すぐにグループホームに戻り、状況確認。

もうね、「すごすぎるな」としか言葉が出ない。

鍵をいくつか外し、タンスに上って窓を20センチほどこじ開け、そこから出たみたい。
ていうかタンス上ったって?どうやって?

ほんで、ここ?
ここが通れる??

はぁー、と深いため息。
失望と感嘆と諦めが混じった玉虫色のやつ。
なんだかやりきった感で落ち着いているそうちゃんを連れて、家に帰った。
こちとらどっと疲れてめちゃめちゃしんどくなって、睡眠導入剤飲んで寝たよ。久々に。

まだ「最終手段」の設置前でよかった。
うっすら希望は残っている。
何より、そうちゃんが日に日に落ち着いてきている気がしてる。
今日はお風呂屋さんにも行けたよ。
B型でカラオケと喫茶店行って楽しかったみたいだし。
今寝室で来週の予定を繰り返し独り言で言ってるけど、ちゃんとグループホームに戻ることが予定に組み込まれている。

きっと大丈夫。
もし大丈夫じゃなくても、家に戻せばいいだけのこと。
毎日が夏休み、と思えばなんとかなる。
職場の理解は得られそうだし。
また折を見て次の預け先を探せばいいさ。

どこにいようがそうちゃんの笑顔が守られますように。
ホームの飾り棚に、高等部卒業の時にもらったクラス写真と、デイでもらったバースデーカードを飾ってみた。
みんなが応援してるよ。
がんばれ、社会人一年目。