夏あさのした葉の草のしげさのみ日ごとにまさるころにもあるかな(好忠集)
わが蒔きし麻をのたねをけふ見れば千枝(ちえ)にわかれて風ぞすずしき(夫木抄)
刈りはやす麻の立ち枝(え)にしるきかな夏のすゑ葉になれるけしきは(夫木抄)
白たへの雲の糸すぢ乱るなり天つ乙女や夏そ引くらし(草根集)
五月雨のひましなければ夏引きの手ぐりの糸も干しぞわづ らふ(正治二年初度百首)
わぎも子がこやの篠屋(しのや)のさみだれにいかで干すらむ夏引きの糸(詞花和歌集)
知るらめや手引きの糸の一(ひと)すぢにわくかたもなく思ふこころを(正治二年初度百首)
わぎもこが手たゆきまでに夏引きのいとうちたえぬ恋もするかな(因幡権守重隆歌合)
夏引きの手引きの糸のうちはへてくるしき恋はよるぞまされる(続千載和歌集)
忘られて思ふばかりのあらばこそかけても知らめ夏引の糸(今物語)