五月雨のそらなつかしくにほふかな花橘に風や吹くらむ(後拾遺和歌集)
たちばなのかをり涼しく風たちて軒ばに晴るる夕ぐれの雨(風雅和歌集)
わがやどの花たちばなや匂ふらむ山ほととぎす過ぎがてに鳴く(風雅和歌集)
風かをる花たちばなに時鳥こゑなつかしき夕まぐれかな(正治二年初度百首)
五月闇はなたちばなのありかをば風のつてにぞ空に知りける(金葉和歌集)
さつき待つ花たちばなの香をかげばむかしの人の袖の香ぞする(古今和歌集)
ももしきの庭のたちばな思ひいでてさらに昔をしのぶ袖かな(土御門院御集)
折(をり)しもあれ花たちばなのかをるかな昔を見つる夢の枕に(千載和歌集)
たちばなのにほふあたりのうたた寝に夢もむかしの袖の香ぞする(新古今和歌集)
かへりこぬむかしを今と思ひ寝の夢の枕ににほふたちばな(新古今和歌集)
たちばなの花散る里のほととぎす片恋(かたこひ)しつつ鳴く日しぞ多き(万葉集)
風に散る花たちばなを袖に受けて君が御跡(みあと)と偲びつるかも(万葉集)