秋風の吹きにし日より天河(あまのがは)瀬に出(い)でたちて待つと告げこそ(万葉集)
たなばたはあさ引く糸の乱れつつとくとや今日の暮れを待つらむ(後拾遺和歌集)
逢ふことは今日と思へど七夕の暮るる待つまのこころをぞ知る(亀山殿七百首)
いかばかり身にしみぬらむ七夕のつま待つよひの天(あま)の川風(新古今和歌集)
彦星のつま待つよひの秋かぜにわれさへあやな人ぞ恋しき(拾遺和歌集)
思ひきやたなばたつめに身をなして天の河原をながむべしとは(和泉式部日記)
彦星にけふは我が身をなしてしが暮れなば天の河わたるべく(平仲物語)
彦星と織女(たなばたつめ)とこよひ逢ふ天の川門(かはと)に波立つなゆめ(万葉集)
夕立に水まさるらむ天の河はるかにわたせかささぎの橋(夫木抄)
あまのがは今宵ながめぬ人ぞなき恋のこころを知るも知らぬも(和泉式部集)
たなばたに心をかして天の河うきたる空に恋ひやわたらむ(能宣集)
あまのがは今やたなばたわたるらむ更けゆく空のかげぞ涼しき(二条太皇太后宮大弐集)
君が舟いま漕ぎ来(く)らし天の河霧立ちわたるこの川の瀬に(万葉集)
彦星のつまむかへ船漕ぎ来らし天の川瀬に霧立ちわたる(家持集)
秋もなほ天の河原に立つ波のよるぞみじかき星合(ほしあひ)の空(続後撰和歌集)
かささぎのわたすほどなく明けわたる夜半のつばさや夢の浮橋(百詠和歌)
いつよりか天(あま)の河瀬(かはせ)にわたしけむ年(とし)にひと夜(よ)の夢の浮橋(草庵集)
ちぎりけむ心ぞつらき七夕の年(とし)にひとたび逢ふは逢ふかは(古今和歌集)