忘れぬまみ 薄田淳介(薄田泣菫)
一
夏野の媛(ひめ)の手にとらす
しろがね籠(がたみ)、ももくさの
香(か)には染(し)むとも、追懷(おもひで)は
人のまみには似ざらまし。
二
伏目(ふしめ)にたたすあえかさに、
ひと日(ひ)は、白き難波薔薇(なにはばら)、
夕日がくれに息(いき)づきし
津の國の野を思ひいで。
三
ひと日(ひ)は、うるむ月の夜(よ)に、
水漬(みづ)く磯根の葦の葉を、
卯波(うなみ)たゆたにくちづけし
深日(ふけひ)の浦をおもひいでぬ。
(青空文庫の「白羊宮」より)
忘れぬまみ 薄田淳介(薄田泣菫)
一
夏野の媛(ひめ)の手にとらす
しろがね籠(がたみ)、ももくさの
香(か)には染(し)むとも、追懷(おもひで)は
人のまみには似ざらまし。
二
伏目(ふしめ)にたたすあえかさに、
ひと日(ひ)は、白き難波薔薇(なにはばら)、
夕日がくれに息(いき)づきし
津の國の野を思ひいで。
三
ひと日(ひ)は、うるむ月の夜(よ)に、
水漬(みづ)く磯根の葦の葉を、
卯波(うなみ)たゆたにくちづけし
深日(ふけひ)の浦をおもひいでぬ。
(青空文庫の「白羊宮」より)