題しらす みふのたゝみね
ゆめよりもはかなき物は夏のよの暁かたの別なりけり
(後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
臥すほどもなくて明けぬる夏の夜は逢ひても逢はぬ心地こそすれ
(源氏釈所引の源氏物語・東屋の出典和歌~バージニア大学HPより)
四月ばかり、人来て夜更けて
夏の夜を明かしも果てでゆく月を見に来むとだに思ひおこせよ
(和泉式部集~岩波文庫)
八条太政大臣家歌合に、夏恋 左京大夫顕輔
夏ころもひとへにつらき人こふる我こゝろこそうらなかりけれ
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
うらなくもなにたのみけむうすころもひとへにかはるひとのこころを
(永享百首~日文研HPより)
うすくなる人の契は夏山の梢にさらす蝉のはころも
(宗尊親王百五十番歌合~日文研HPより)
ま葛延ふ夏野の繁くかく恋ひばまこと我が命常ならめやも
(万葉集~バージニア大学HPより)
わかこひはあはてのもりのなつくさのひとこそしらねしけるころかな
(建保名所百首~日文研HPより)
あふことはなつのにしけるこひくさのかりはらへともおひむせひつつ
(散木奇歌集~日文研HPより)
草のいと青う生ひたるを見て
わが心夏の野辺にもあらなくに繁くも恋のなり増さるかな
(和泉式部続集~岩波文庫)
題しらす 坂上是則
をしかふす夏野の草の道をなみしけき恋路にまとふ比哉
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
夏草にましるさゆりにおくつゆのかゝる袖ともいかてしらせん
(「古筆への誘い」国文学研究資料館編、平成17年、三弥井書店)
夏草のしげみがしたのむもれ水かよふ心を知る人もなし
(拾藻鈔)
夏恨恋
夏引のあさほすをふのうらみてもかひなき袖の五月雨の比
(草根集~日文研HPより)
よそにのみ思ひけるかな夏山の繁き嘆きは身にこそありけれ
(うつほ物語~新編日本古典文学全集)
恋ひ死なば恋ひも死ねとやほととぎす物思(も)ふ時に来鳴き響(とよ)むる
(万葉集~岩波文庫)
寄虫恋 成茂
ひるはきえ暮るれはもゆる夏虫のいはぬ思ひをそれとしらなん
(宝治百首~日文研HPより)
みをすててひとつおもひにこかれたるこころそなつのむしにまされる
(陽成院歌合~日文研HPより)
なつふかきもりのうつせみおのれのみむなしきこひにみをくたくらむ
(金槐和歌集~日文研HPより)
おのづからむすぶちぎりもなつ川のうたかた人に消えつつぞふる
(紫禁和歌集)
大夫そばのもみぢのうちまじりたるえだにつけてれいのところにやる。
なつやまのこのした露のふかければかつぞなげきのいろもえにける
かへりごと
つゆにのみいろもえぬればことのはをいくしほとかはしるべかるらん
(蜻蛉日記~バージニア大学HPより)
夏の日も朝夕涼みあるものをなど我が恋のひまなかるらむ
(源氏釈所引の源氏物語・若菜下の出典和歌~バージニア大学HPより)
わきもこかあせにそほつるねよりかみなつのひるまはうとしとやおもふ
(好忠集~日文研HPより)
題しらす 読人不知
あまのはらふみととろかしなる神も思ふなかをはさくるものかは
(古今和歌集~日文研HPより)
神鳴る日、妻のもとにて、「いかが」と問ひたる人に
わがためもいとど雲居になる神もまことに放(さ)けぬ名こそ惜しけれ
(和泉式部続集~岩波文庫)