初声(はつこゑ)の聞かまほしさにほととぎす夜ぶかく目をもさましつるかな(拾遺和歌集)
山ちかく家ゐしをればほととぎす鳴く初こゑを我のみぞ聞く(金槐和歌集)
夏山の木末(こぬれ)の繁(しげ)にほととぎす鳴きとよむなるこゑのはるけさ(万葉集)
こゑはして雲ぢにむせぶ時鳥なみだやそそく宵の村雨(新古今和歌集)
五月雨の雲のたえ間に月さえて山ほととぎす空に鳴くなり(金葉和歌集)
ほととぎす一声(ひとこゑ)にこそ五月雨のよはあはれとも思ひそめしか(中務集)
五月雨にものおもひ居(を)ればほととぎす夜ぶかく鳴きていづちゆくらむ(古今和歌集)
五月闇くらぶの山のほととぎすほのかなる音(ね)に似るものぞなき(拾遺愚草)
明星(あかぼし)のかげをともにて山の端(は)を夜ぶかくいづる時鳥かな(為忠家後度百首)
小夜ふけてあかとき月にかげ見えて鳴くほととぎす聞けばなつかし(万葉集)
夜もすがらかたらひおきて時鳥いづち行くらむ明けぼのの空(正治二年初度百首)