monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 秋 朝顔

2015年08月05日 | 日本古典文学-秋

題しらす よみ人しらす
君こすは誰にみせまし我やとのかきねにさける朝かほの花
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす よみ人しらす
おほつかな誰とかしらん秋霧の絶まにみゆるあさかほの花
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 貫之
山かつのかきほにさける朝かほはしのゝめならてあふよしもなし
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

百首御歌中に 後鳥羽院御歌
しのゝめと契りてさける朝かほにたかかへるさの涙をくらん
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

 霧のいと深き朝、いたくそそのかされたまひて、ねぶたげなる気色に、うち嘆きつつ出でたまふを、中将のおもと、御格子一間上げて、見たてまつり送りたまへ、と思しく、御几帳引きやりたれば、御頭もたげて見出だしたまへり。
  前栽の色々乱れたるを、過ぎがてにやすらひたまへるさま、げにたぐひなし。廊の方へおはするに、中将の君、御供に参る。紫苑色の折にあひたる、羅の裳、鮮やかに引き結ひたる腰つき、たをやかになまめきたり。
  見返りたまひて、隅の間の高欄に、しばし、ひき据ゑたまへり。うちとけたらぬもてなし、髪の下がりば、めざましくも、と見たまふ。
  「咲く花に移るてふ名はつつめども折らで過ぎ憂き今朝の朝顔
  いかがすべき」
  とて、手をとらへたまへれば、いと馴れてとく、
  「朝霧の晴れ間も待たぬ気色にて花に心を止めぬとぞ見る」
  と、おほやけごとにぞ聞こえなす。
  をかしげなる侍童の、姿このましう、ことさらめきたる、指貫の裾、露けげに、花の中に混りて、朝顔折りて参るほどなど、絵に描かまほしげなり。
(源氏物語・夕顔~バージニア大学HPより)

身の有様思ひ乱れて、白河より出でなむことを思ひ立つ日、「うち解けて見つる名残に常よりも恋しさまさる朝顔の花」と侍りける御返し 朝倉の女院
置く露も光添へつる朝顔の花はいづれの暁か見む
(物語二百番歌合~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

(略)やがてまどろまず明かしたまへる朝に、霧の籬より、花の色々おもしろく見えわたれる中に、朝顔のはかなげにて混じりたるを、なほことに目とまる心地したまふ。「明くる間咲きて」とか、常なき世にもなずらふるが、心苦しきなめりかし。
  格子も上げながら、いとかりそめにうち臥しつつのみ明かしたまへば、この花の開くるほどをも、ただ一人のみ見たまひける。
(略)
出でたまふままに、降りて花の中に混じりたまへるさま、ことさらに艶だち色めきてももてなしたまはねど、あやしく、ただうち見るになまめかしく恥づかしげにて、いみじくけしきだつ色好みどもになずらふべくもあらず、おのづからをかしくぞ見えたまひける。朝顔引き寄せたまへる、露いたくこぼる。
  「今朝の間の色にや賞でむ置く露の消えぬにかかる花と見る見る
 はかな」
  と独りごちて、折りて持たまへり。
(源氏物語・宿木~バージニア大学HPより)

朝顔は常なき花の色なれや明くる間咲きて移ろひにけり
(花鳥余情~バージニア大学HP「源氏物語・宿木」より)

世間常ならす侍ける比、朝顔の花を人の許につかはすとて 紫式部
消ぬまの身をもしるしる朝かほの露とあらそふ世をなけくかな
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

何か思ふなにかはなけく世中はたゝ槿の花のうへの露
 この歌は、清水観音御歌となんいひつたへたる
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

ありとても頼むべきかは世の中をしらする物は朝顔の花
(和泉式部集~岩波文庫)
槿花やかなる、人にやるとて
今の間の朝顔を見よかかれどもただこの花はこの世の中ぞかし
(和泉式部続集~岩波文庫)

亡くなりたりける人の持たりける物の中に、朝顔を折り枯らしてありけるを見て
朝顔を折りて見んとや思ひけん露よりさきに消えにける身を
(和泉式部続集~岩波文庫)

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古典の季節表現 八月 上丁日 釈奠

2015年08月03日 | 日本古典文学-秋

玉俎風蘋を薦め、金罍月桂浮かぶ。天縦の神化遠く、万代芳猷を仰ぐ。
(懐風藻~岩波・日本古典文学大系)

から人のかしこき影をうつしとめて聖の時とけふまつるなり
(年中行事歌合~群書類従)

十一日はしやくてんなり。あさがれひにて、「ありつぐそうず・ゆゝしきみちの人々、詩つくりてあそぶらんこそゆかしけれ。などこの殿上などにてなかるらむ。さもあらば、たちきゝてむ。」など、人々おほせられしかば、辨内侍、
道しあらば尋ねてぞ聞かん敷嶋や倭にはあらぬ唐のことのは
(弁内侍日記~群書類從)

天長二年八月戊申(八日) 釈奠に伴い大学博士・学生らを紫宸殿に召して、論議させ、身分に応じて物を下賜した。博士従五位下伊予部連真貞の論旨の展開と用語が優れており、勅により次侍従に補任することになった。
(日本後紀~講談社学術文庫)

天長三年八月戊戌(三日) 大学博士従五位下伊予部連真貞と直講・学生らを紫宸殿に召して、儒教の経典についての論議である内論議を行った。これは釈奠に伴う慣例となっており、禄を下賜した。
(日本後紀~講談社学術文庫)

長徳三年八月六日、戊戌。
今日は釈奠の内論議である。天皇が紫宸殿に出御されるということを、昨日、左大臣(藤原道長)の宣を承って、左大史(多米)国平朝臣に伝えた。また、蔵人(藤原)広業に命じて、御簾を懸け、内侍を召させた。
辰剋、所司が紫宸殿の室礼を行った。その儀は、天皇が出御しない節会と同じであった。(略)
(権記~講談社学術文庫)

藤原守光重病を冒して薩摩より釈奠に馳せ参ずる事
大監文物藤原守光は、侍学生の中には名誉の物にてなむ侍ける。嘉応年中に、むこ薩摩守重綱にあひぐして、彼国へ下(くだり)たりけり。承安三年、重病をうけて、日来(ひごろ)なやみけるが、少よくなりたりけれども、猶れいのさまにはなかりけり。さりながら、八月以前に上洛して、釈奠にまゐらむと思たちけり。したしき物ども制しけれども、猶いひてのぼりぬ。八月七日、疲極しながら、小袖のうへに、下重うへの衣計(ばかり)をきて、廟門にまゐりたりけるに、宴座とまりければ、まかり出にけり。さしもはるかなる道を、しかも病につかれたる身にて、からくしてのぼりたるに、むなしくて出にける、いかにほいなかりけむ。心ざしのいたり、是も宿執にひかれて哀(あはれ)なり。
(古今著聞集~岩波・日本古典文学大系)

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古典の季節表現 秋 八月上旬

2015年08月02日 | 日本古典文学-秋

慶雲元年八月戊午(五日)、伊勢・伊賀の二国に蝗(いなご)あり。
辛巳(二十八日)、周防国、大風ふき、樹(き)を抜きて秋稼(あきのみのり)を傷(そこな)ふ。
(続日本紀~新日本古典文学大系12)

延暦十二年八月癸丑(七日)
蓮葉を観賞して宴を催した。音楽を奏して、禄を下賜した。
(日本後紀~講談社学術文庫)

承和十一年八月辛巳朔(一日)
天皇が紫宸殿に出御して、萩(芳宜)の花宴を催した。老臣らは復古の儀に感歎した。
(続日本後紀~講談社学術文庫)

(長保二年八月)十日、甲寅。
(略)小舎人(笠)貞正が進上した瓜を五果、左府に送り奉った。その味は、近頃、見たものとは異なる。「召平の種」と称すべきものであるからである。
(権記〈現代語訳〉~講談社学術文庫)

長保五年八月三日、庚申。
御庚申待が行なわれた。題は、「秋はこれ、詩人の家」と。情を韻とした。
(権記〈現代語訳〉~講談社学術文庫)

(長和二年八月)五日、甲子。
今日、丹生・貴布禰両社に奉幣を行なった。この奉幣使は、雨が止むように祈禱する使である。赤馬を献納された。使は、蔵人の(藤原)敦親と(藤原)登任であった。源中納言(源俊賢)が発遣の上卿を勤めた。宣命を内記(大江)為清が、春宮(敦成親王)の御在所(凝花舎)に持ってきた。
(御堂関白記〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)

 嘉保二年八月八日、院に行幸ありて相撲を御覧ぜられる。江師、兼日に式をつくりてたてまつりける時、舞人狛光季申けるは、「万歳楽をとゞめて賀殿を奏せんと思(おもふ)。その故は、一には万歳楽は毎年に御らむぜらるゝ曲也。一には説は賀殿おなじかるべし。一には舞興賀殿まされり。一には此院新造たり。賀殿の儀あひ叶(かな)へり」。江師このよしを奏せられければ、しかるべきよし勅定ありて、まづ賀殿・地久を奏しけり。其時の内裏は堀川院、仙洞は閑院にて侍けり。程ちかければ、かちの行幸にてぞ侍ける。
(古今著聞集~岩波・日本古典文学大系)

(正治元年八月)一日。天晴る。大臣殿に参ず。旬、御祓ひ。陪膳に奉仕し了んぬ。(略)
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)

(正治元年八月)七日。朝より少雨降る。未後に甚雨。午の時許りに大臣殿に参ず。蔵人大進長兼参入す。心閑かに心事を談ず。終日伺候し、深更に退下す。延杲僧正、祈雨を御所に承はる。程なく甚雨。霊験と謂ふべし。但し、国土のため今に於ては無益か。
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)

(建仁元年八月)三日。今夜、影供の歌合せなり。良々久しくして、右中弁出でおはしますの由を申す。次第に参着。大略一夜(ひとよ)の如し。左大臣殿・内大臣殿・座主・入道殿・頭中将・隆信朝臣・有家朝臣・予・保季・師光入道・雅経・具親・寂蓮なり。是より先、文台に歌合せ二巻を置く。召しに依りて予参上す。講師を供(つかまつ)る。六題、各々十八番。題、作者を書かる。評定。入道殿判せしめ給ふ。夜半過ぎて入りおはします。人々分散す。大臣殿出でおはしまし了んぬ。予、窮屈に依りて、直ちに坊門に帰る。今夜御結びに召さる。道の面目なり。五番を参りて勝ちおはまし、一番持の由、仰せ事あり。
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)

(建保元年八月)七日。天晴る。未の時、俄に陰る。大雨忽ち降る。法験なり。一時を経ずして晴る。(略)今夜始めて秋気有り。雨後の凉風か。
八日。天晴る。未の時許りに雷鳴。大風小雨。夜に入り院に参ず。頭弁神泉より参ずと云々。語りて云ふ、今夜請雨経法を始めらる。成宝僧正。此の法永久年中の後、九十余年断絶。今度修せらる。江闍梨、人夫百人許りを以て、池幷に庭上を修治し、悉く其の垢穢を払ふ。是れ故実と云々。祐普法印(四の長者)昨日孔雀経法結願。已に耻を凌ぐと云々。(略)
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)

(建保三年八月)十日 丁酉。晴、 将軍家、聊カ御不例ノ間、御所ニ於テ、御祈ヲ行ハル。大監物宣賢、月曜ノ祭ニ奉仕ス。 
(吾妻鏡~国文学研究資料館HPより)

(寛喜二年八月)二日(辛酉)。天晴る。終日、綿衣を著す。薄の穂多く出づ。近日小鳥山を出で、渡ると云々。菊の花已に含む。朝、止観を校す。(略)
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)

(建長六年八月)十日 庚辰 雨降ル。夜ニ入テ晴ニ属ス。丑ノ剋ニ、東方ニ白虹見ハル。
(吾妻鏡~国文学研究資料館HPより)

八月一日、中宮の御方よりまゐりたりし御たきもの、よのつねならず匂ひうつくしう侍りしかば、辨内侍、
けふはまた空焚物の名をかへてたのめば深き匂ひとぞなる
院の御所の辨内侍、こうたうの内侍のもとへ、「はぎのとの萩はさきたりや。」とたづねられたるに、一枝をりてつかはすとて、こうたうの内侍にかはりて、辨内侍、
秋をへて馴れこしにはの萩のえにとめし心の色をみせばや
かへし、
思ひやる萩のふるえにおく霜はもとみし人の涙なりけり
(弁内侍日記~群書類從18)

八月のはじめつかたにもなりぬれば、武蔵野の秋の気色ゆかしさにこそ今までこれらにも侍りつれ、と思ひて、武蔵の国へかへりて、浅草と申す堂あり。十一面観音のおはします、霊仏と申すもゆかしくて参るに、野のなかをはるばるとわけゆくに、はぎ、をみなへし、をぎ、すすきよりほかは、またまじる物ものもなく、これが高さは、馬にのりたる男の見えぬほどなれば、おしはかるべし。三日にや、わけゆけども尽きもせず。
(問はず語り~岩波文庫)

八月十日比(ころ)、いつの日にてありしやらん、時雨に先立ちて色深き紅葉の枝に、紅(くれなゐ)の薄様結びつけられて、仲房朝臣もて下(くだ)されたりし。
 まだ知らぬ深山(みやま)隠れに尋来て時雨も待たぬ紅葉をぞ見る
御返し、
 ふるさとに帰る行幸(みゆき)の折からや紅葉の錦かつ急ぐらん
(小島のくちずさみ~(岩波)新日本古典文学大系51中世日記紀行集)

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季節表現 八月

2015年08月01日 | 日本古典文学-秋

八月(はちぐわつ)
 向日葵(ひまはり)、向日葵(ひまはり)、百日紅(ひやくじつこう)の昨日(きのふ)も今日(けふ)も、暑(あつ)さは蟻(あり)の數(かず)を算(かぞ)へて、麻野(あさの)、萱原(かやはら)、青薄(あをすゝき)、刈萱(かるかや)の芽(め)に秋(あき)の近(ちか)きにも、草(くさ)いきれ尚(な)ほ曇(くも)るまで、立(たち)蔽(おほ)ふ旱雲(ひでりぐも)恐(おそろ)しく、一里塚(いちりづか)に鬼(おに)はあらずや、並木(なみき)の小笠(をがさ)如何(いか)ならむ。否(いな)、炎天(えんてん)、情(なさけ)あり。常夏(とこなつ)、花(はな)咲(さ)けり。優(やさ)しさよ、松蔭(まつかげ)の清水(しみづ)、柳(やなぎ)の井(ゐ)、音(おと)に雫(しづく)に聲(こゑ)ありて、旅人(たびびと)に露(つゆ)を分(わか)てば、細瀧(ほそだき)の心太(ところてん)、忽(たちま)ち酢(す)に浮(う)かれて、饂飩(うどん)、蒟蒻(こんにやく)を嘲(あざ)ける時(とき)、冷奴豆腐(ひややつこ)の蓼(たで)はじめて涼(すゞ)しく、爪紅(つまくれなゐ)なる蟹(かに)の群(むれ)、納涼(すゞみ)の水(みづ)を打(う)つて出(い)づ。やがてさらさらと渡(わた)る山風(やまかぜ)や、月(つき)の影(かげ)に瓜(うり)が踊(をど)る。踊子(をどりこ)は何々(なになに)ぞ。南瓜(たうなす)、冬瓜(とうがん)、青瓢(あをふくべ)、白瓜(しろうり)、淺瓜(あさうり)、眞桑瓜(まくはうり)。
(泉鏡花「月令十二態」~青空文庫より)

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