題しらす よみ人しらす
君こすは誰にみせまし我やとのかきねにさける朝かほの花
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
題しらす よみ人しらす
おほつかな誰とかしらん秋霧の絶まにみゆるあさかほの花
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
題しらす 貫之
山かつのかきほにさける朝かほはしのゝめならてあふよしもなし
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
百首御歌中に 後鳥羽院御歌
しのゝめと契りてさける朝かほにたかかへるさの涙をくらん
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
霧のいと深き朝、いたくそそのかされたまひて、ねぶたげなる気色に、うち嘆きつつ出でたまふを、中将のおもと、御格子一間上げて、見たてまつり送りたまへ、と思しく、御几帳引きやりたれば、御頭もたげて見出だしたまへり。
前栽の色々乱れたるを、過ぎがてにやすらひたまへるさま、げにたぐひなし。廊の方へおはするに、中将の君、御供に参る。紫苑色の折にあひたる、羅の裳、鮮やかに引き結ひたる腰つき、たをやかになまめきたり。
見返りたまひて、隅の間の高欄に、しばし、ひき据ゑたまへり。うちとけたらぬもてなし、髪の下がりば、めざましくも、と見たまふ。
「咲く花に移るてふ名はつつめども折らで過ぎ憂き今朝の朝顔
いかがすべき」
とて、手をとらへたまへれば、いと馴れてとく、
「朝霧の晴れ間も待たぬ気色にて花に心を止めぬとぞ見る」
と、おほやけごとにぞ聞こえなす。
をかしげなる侍童の、姿このましう、ことさらめきたる、指貫の裾、露けげに、花の中に混りて、朝顔折りて参るほどなど、絵に描かまほしげなり。
(源氏物語・夕顔~バージニア大学HPより)
身の有様思ひ乱れて、白河より出でなむことを思ひ立つ日、「うち解けて見つる名残に常よりも恋しさまさる朝顔の花」と侍りける御返し 朝倉の女院
置く露も光添へつる朝顔の花はいづれの暁か見む
(物語二百番歌合~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
(略)やがてまどろまず明かしたまへる朝に、霧の籬より、花の色々おもしろく見えわたれる中に、朝顔のはかなげにて混じりたるを、なほことに目とまる心地したまふ。「明くる間咲きて」とか、常なき世にもなずらふるが、心苦しきなめりかし。
格子も上げながら、いとかりそめにうち臥しつつのみ明かしたまへば、この花の開くるほどをも、ただ一人のみ見たまひける。
(略)
出でたまふままに、降りて花の中に混じりたまへるさま、ことさらに艶だち色めきてももてなしたまはねど、あやしく、ただうち見るになまめかしく恥づかしげにて、いみじくけしきだつ色好みどもになずらふべくもあらず、おのづからをかしくぞ見えたまひける。朝顔引き寄せたまへる、露いたくこぼる。
「今朝の間の色にや賞でむ置く露の消えぬにかかる花と見る見る
はかな」
と独りごちて、折りて持たまへり。
(源氏物語・宿木~バージニア大学HPより)
朝顔は常なき花の色なれや明くる間咲きて移ろひにけり
(花鳥余情~バージニア大学HP「源氏物語・宿木」より)
世間常ならす侍ける比、朝顔の花を人の許につかはすとて 紫式部
消ぬまの身をもしるしる朝かほの露とあらそふ世をなけくかな
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
何か思ふなにかはなけく世中はたゝ槿の花のうへの露
この歌は、清水観音御歌となんいひつたへたる
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
ありとても頼むべきかは世の中をしらする物は朝顔の花
(和泉式部集~岩波文庫)
槿花やかなる、人にやるとて
今の間の朝顔を見よかかれどもただこの花はこの世の中ぞかし
(和泉式部続集~岩波文庫)
亡くなりたりける人の持たりける物の中に、朝顔を折り枯らしてありけるを見て
朝顔を折りて見んとや思ひけん露よりさきに消えにける身を
(和泉式部続集~岩波文庫)