亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

机上の空論、砂上の楼閣

2008年11月12日 22時55分28秒 | 金市場
本日は午後に、最近の金市場についてのレポートを書いた。想定の倍以上の文字数となった。以下はその一部というわけではなく、その余韻のなかで、先ほど書いたもの。

ドルが買われる状況が続いている。主要6通貨に対するドルの水準を示すドルインデックス(ドル指数)は10月27日以来の87ポイント台に乗ってきた。ちなみに例えばBloombergなら英文サイトで左上の「QUOTE」の欄にDXY:INDと入れQUOTEをクリックすれば見ることができる。過去何度も触れたが、ドル建て金価格と逆相関関係にある。今回はその話ではないので置いておこう。今の水準は過去1年の高値水準。06年4月以来の水準でもある。なぜ高いのか(=なぜ買われているのか)?金融取引の損失の処理や債務軽減の過程でドルの一斉調達が起きているから。なぜドルなのか?それはドルが基軸通貨でドル建ての取引が多いから。

ウォールストリートがひどく傷んでいるにもかかわらず、ドルが強いという現象は、金融の自己増殖の巻き戻し(取引解消)のなかで起きている(同時多発的ゆえに)急激な資金移動(マネーフロー)によりもたらされているといえる。金融村の外から眺める分には、この危機はまさに実物資産である金の買い材料であって、事実、従来の新興国ではなく欧米の個人投資家の間でさえ金貨を買い求める動きが巻き起こり地金不足という現象まで起きている。一方で、その金融村の中ではどうしてもドルを欲しい向きはてっとり早く金を売るという行動に出る者もいる。ここで思い出すべきは、金を語る際に「代替通貨」という呼び方がされることだろう。端的には、「金を売る」ということは「ドルを手にする」ということとイコールである。金を借り起こして売却という動きもあるだろう。しかし、それは価格操作とは別の次元の話であって、結果的に価格を抑えることになったとしても、そもそも押し下げる目的を持って売っているわけではないと思われる。見る角度によって様々な捉え方はあろうが、それが整合性のある合理的判断ではないか。陰謀論は、ストーリーとしては面白い。

そもそも金融の世界と金の世界の規模は比較にならないほど違う。有史以来掘り起こされた金の総量は、50メートルプールにして約3杯強とされる。その時価総額は足元で400兆円弱。日本の個人金融資産の3分の1以下の規模である。金価格を押し下げることで、ドル価値を維持する?心理的な効用くらいは期待できそうだ。ならばドル価値を下げる目的で、日本の個人が持てる金融資産を使って金を買い上げれば、目的を遂げられるのか(ドルインデックスは急落)?机上の空論、砂上の楼閣。


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2 コメント

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戻りなし (いつも拝見しております)
2008-11-13 12:03:21
お疲れさまです。

バーター貿易・・・時代に逆行する流れですね。
一ヶ月の貿易量の2%だそうですが
これがどこまで膨らむやら・・・
超長期債でもすでに一般国債の市場が止まる状況では・・・
BEIが使えないとの話はいつの間にかイールドカーブが使えないになってます。
債権取引の中心的なアービトラージも機能していない証左と仮定すれば不気味な心地です。当たってないことを祈りますが・・・
これでは、世界的バランスシート不況に陥る可能性もありますね。地球外市場でもあればいいのですが、現時点では逃げ場なしです。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20081113AT2M1301D13112008.html
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ありがとうございます。 (お星様)
2008-11-13 07:08:47
なるほど、本日の先生のお言葉でこのごろの金の動きがよく理解できました。いつもありがとうございます。
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