亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

タカ派化したFRBに逆行高する金

2022年01月12日 23時20分28秒 | 金市場

一時1.8%を超える米長期金利の上昇の中で、NY金は心理的節目となっている1800ドル台を回復した。

先週1月5日に発表された12月FOMCの議事要旨の内容が利上げの3月前倒しの可能性は元より、バランスシート(保有資産)縮小についても従来感覚とは大きく異なり、早急に着手する可能性が示唆されたことで、長期金利上昇の中で金はいったんは1780ドル台まで売られていた。

昨日は、金にとっては米長期金利上昇とドル指数上昇という逆風の中にもかかわらず1800ドル台維持に向かう金という趣旨で書いたが、まずは長期金利上昇の持続性に疑問符が付いたことがある。先週末7に続き週明け10日のNY債券市場では、10年債が2営業日連続で一時1.8%台まで水準を切り上げながら終盤に失速するということがあった。おそらく1.8%台の利回りが確保できるのであれば、買いたい需要が多いのだろう。足元では依然としてカネ余りに変わりはなく、イールドシーカー(利回り探し)の需要は多いとみられる。それが長期金利の上昇に歯止めをかけ、市場に安心感が生まれたと思われる。

11日は報じられたように2月に4年の任期を終えるパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の(議長再任指名に関する)公聴会が開かれた。

パウエル議長の発言内容の基調的部分は、米国経済はFRBによる大規模な刺激策を「もはや必要としていない」というもの。「もはや必要としておらず、望んでもいない」とした。失業率が低下を続けて足元で4%を下回ったことを挙げ、「労働市場は信じられないほど急速に回復している」ことから、年内に計画される引き締め策によって堅調な雇用市場が損なわれることはないという認識を示した。

利上げやバランスシート(保有資産)縮小に関する時期やペースを巡る決定については、FRBはまだ何ら決定していないとしながらも、「幾分機敏となる必要がある」とした。バランスシート(保有資産)縮小については、前回の景気後退(07~09年)後に行われた時よりも、「より早期かつより速いペース」で進められる公算が大きいとした。政策判断は状況の変化を見ながらデータに沿ってという従来からの観点から、「高インフレが予想より長く続くと判断した場合は、多くの利上げが必要になるかもしれない」とも述べている。

つまり3回が見込まれている利上げだが、4回もあり得るということ。逆に(現状では可能性は低いが)2回に終わるかもしれないということになる。金融政策はオートパイロット(自動操舵)というわけにはいかないので、もっともなことだろう。ただし、仮に利上げ回数が増えるとしても「時間をかけて」と、金融市場が動揺するのを避けたいという意向をにじませた。

こうした証言内容を受けて株価は上昇し、市場の警戒モードは一気に解けることになったが、それまでは戦々恐々という感じだったのは、やはり議事要旨によるタカ派スタンスが急浮上したことによる。昨日取り上げたように、JPモルガンはじめゴールドマンサックスが急速にFRBの引き締め方針を前倒しする見方に転じたことがあった。ところがパウエル発言は、そこまで前のめりではなかったということになった。で市場に安心感が広がったということに。

さて、先ほど発表された12月の米CPI(消費者物価指数)は、11月の6.8%から7.0%に加速していた。6%超は3カ月連続で、7%となると1982年以来40年ぶりの水準ということに。エネルギーと食品を除いたコア指数は前月の4.9%から5.5%に跳ね上がった。ただし、加速はFRBとしても想定内のこと。この後の市場の反応はどうなるか。。タカ派化したFRBに逆行高する金。

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