亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

言ったモン勝ち、やったモン勝ちの「力での国境変更」の厚顔無恥

2014年05月15日 23時46分37秒 | 国際情勢

「厚顔無恥(こうがんむち)」を国語辞典で引くと「厚かましく恥知らずなこと・さま」となっている。最近の南シナ海の西沙諸島および南沙諸島をめぐる問題に対する、中国側の対応をメディアで見聞きしていて浮かべるのがこの言葉だ。自分たちは絶対的に正しく、あくまで非は相手側にあり、ベトナム船との衝突事故にしても(「中国船がぶつかってきた」というベトナム側の言い分は)先方のでっち上げで、むしろベトナム船からぶつかってきたとうそぶく。確かに映像が残っているだけでは、(映像自体が)加工されていないとは言い切れないので、第3者としては反論はできない。

そこに昨日14日に伝えられたのが、南沙(スプラトリー)諸島で中国が不法に一部の浅瀬を埋め立てているとフィリピン政府が4月の初めに抗議していたというニュースだった。ジョンソン南礁と呼ばれるところとされるが、砂を運び埋め立てを進め、まさに実効支配の既成事実を作ろうということのようだ。もとは1988年まではベトナムが実効支配していたところで、中国との武力衝突で奪われそのままになっていたらしい。そこでの行動をベトナムでなくフィリピンが抗議するというのは、いかにもそれぞれが主張する境界線が入り組んでいる南シナ海ならではということなのだが、これにも伏線があった。

フィリピンは「南シナ海の領有権の対立する島で建設行為を行わないという約束に違反している」としている。おそらく 東南アジア諸国連合(ASEAN)が2002年に中国と取り交わした
「南シナ海行動宣言」に盛り込まれている内容に抵触するのだろう。しかし、残念ながらこれは「行動宣言」であって拘束力がないとされる。つまり反故にされても残るのは倫理的に非難されるか、外交の場での信用失墜のみということ。中国側としては、そんなことは痛くも痒くもないということだろう。拘束力のある「行動規範」の合意に向けASEAN側は話し合いを持とうとしてきたが中国側は無視の姿勢らしい。

結局、「国益」という名の下で “(経済および軍事的な)力の強さ”を前面に出して既成事実を作ってしまえば“やったモン勝ち”で、やられた方は“泣き寝入り”という構図がひろがっているわけだ。

そう思いながら改めて考えると、中国側の動きが活発化して近隣諸国との摩擦が高まっているのは、2月下旬以降にロシアのウクライナに対する外交攻勢が活発化し、クリミア編入という既成事実を作ったにもかかわらず国際社会が効果的な対応策を打ち出せていない、まさにその際中のことということ。その経緯を見てという指摘もできよう。5月11日にミャンマーで開かれたASEAN首脳会議でベトナムの首相がしたスピーチは「中国は厚かましくも掘削機を運びこんだ」というものとされる。まさに「厚かましくも」だが、そんなことを意に介しない国ゆえに馬耳東風ということ。

少し前にもこのテーマで書いて、「そもそもウクライナは1994年に米英とロシアの合意の上の『ブタペスト覚書』で核を放棄するかわりに独立と領土保全を約束された経緯がある」とした。その約束を反故にされたにもかかわらず、ウクライナは「泣き寝入り」のようだ。来週、上海にて中ロ首脳会談の予定。仮に経済制裁を強化されても、原油もガスも買うケンね。南シナ海も東シナ海もよろしくね・・・ということか。

傍若無人にふるまう国を「近代のままの国家」という呼び方があるようだが、「近代を脱した国家」も実は「近代を脱していたはずの国家」であって、対抗しているうちに「近代のままの国家」どうしの戦いに転じてしまうとマズイのです。


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