亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

踏み上げ相場一巡のNY金  

2021年06月08日 18時52分51秒 | 金市場
前週末の2つの米労働市場のデータを挟んで1900ドル割れに至ったNY金。報じられたように5月の非農業部門雇用者数(NFP)は前月比55万9000人と67万人増の予想を下回った。雇用の拡大基調が続いていることは確認されたものの、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の縮小を急ぐほどの内容ではないとみなされ、米長期金利が低下。一時は3週間ぶりの高値を付けていたドル指数(DXY)も結果を受けて90.03まで低下し、この2つの条件で金市場では自動的に買戻しの動きが活発化した。
現地午前8時半の発表直後から金は20ドル以上水準を切り上げたものの、前日に下切った節目の価格1900ドルを突破することはできなかった。

 前日は民間雇用事務サービスADPの全米雇用調査にて雇用者増加数が前月比97万8000人増と予想の65万人増を大きく上振れたことで、労働省発表のNFPの上振れを連想させた。こうなるとテーパリング(量的緩和策の段階的縮小)観測が頭をもたげた。折しもFRBが手持ちの一般社債を(当初の役割は終了したとして)、年内に売却する旨の発表を行ったこともあり、“テーパリングの検討” は6月15~16日のFOMC(連邦公開市場委員会)にて論議されるだろうということになった。40ドル近い下げで、1870ドル台まで売り戻された。

 この一連の流れの中で4日発表の労働省のNFPは、予想67万人増に対し100万人程度まで行くのではないかと市場は身構えた。しかし、結果は55万9000人増ということに。つまりADPのデータが連想させた“上振れ”は回避されることになった。

それでも1900ドル台奪還がならないNY金。ひとつの理由は、ここにきて新規資金の流入が止まっていることがある。

内部要因から見て1900ドル超へのNY金押し上げの原動力になったのが、ショートカバー(売り建ての買戻し)だった。毎週末のCFTC(米商品先物取引委員会)によると、5月25日に至る1週間にNY先物取引のショートは重量換算(オプション取引除く)で55トンもの減少となった。同じ期間にロング(買い建て)は6トン減少しているので、こちらは1900ドル超に至る過程で益出しをしていたということだろう。ちなみに類似する5月21日までの1週間で金ETF(上場投資信託)の残高は世界全体で21トンの増加にとどまっている。うちNYが中心の北米は17.4トンを占めている。いずれにしても、1900ドル大台突破に至るドライバー(原動力)は、新規資金の流入(フレッシュロングの拡大)ではなく、ショートカバー(売り建ての手じまい)が主導したということ。形としては「踏み上げ相場」といえるもの。
意味するのは、新規資金の流入が乏しいことで、1900ドル台の維持には新たな買いの手掛かりが必要とみられる。

市場は10日(木)発表の5月の消費者物価指数(CPI)に焦点を当てている。


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