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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

古書展

2007年06月05日 | 東京
 土曜日、久しぶりに高円寺の西部古書会館で行われている古書展へ出かける。特に探している本があるわけではなく、無性に古書展初日の雰囲気を味わいたくなったのである。
 デパートの古書展の初日に出かけたことがある。デパートに着いたのはまだ開店前だったが、すでにデパートのエントランスの周辺には場外馬券売り場のようにオジサンとオジイサンが相当数たむろしている。驚くことにほとんど女性はいない。そして開店するなり、オジサンたちはエレベーターめがけて一目散に走るのである。それにあぶれたオジイサンは、なんと腰を曲げながらエスカレーターを走って上っていく・・・。「福袋」売り出し日に走り回る人々の光景を思い浮かべてみよう。古書展の場合、その客の大半がオジサンかオジイサンだと思えばいい。
 さて西部古書会館だが、大規模なデパート展とは違って、せいぜい小学校の教室程度のスペースに本棚が何列か並べられているだけである。それゆえ、デパートのような壮烈な競争があるわけではないが、小さいなりにどの書架から見るかが重要である。事前に目録で欲しい本がありそうな古書展の書棚に直行する場合の他は、たいてい各自が回る方向を決めている。古書展は「展」の字がついていても、美術展とは違い、順路なんてものは存在しない。同じ書架でも右から、左からと好き勝手に見ることもある。この場合、すれ違う方法にもテクニックが必要である。もし相手と書架の前で交差する場合、どちらがいったん書架から離れるかがポイントである。もし書架の前から離れれば、再び書架の前に戻るのは至難の業である。古書店初日の午前中ともなれば、相当な人口密度であるからだ。これは同じ方向で本を見ている人を抜く場合も同様である。書架の前に割り込める隙間をチェックしながら瞬時に相手を抜き去り、一瞬のうちにわずかな隙間に入り込まなくてはならない。
 そんな古書展の駆け引きを満喫し、ほこりっぽい古書の香りを全身に浴びて、結局購入したのは、文庫本と映画のパンフレットだけであった。正直なところ、私は本を発見するより、古書展ではこのバーゲンセールさながらのスリリングな駆け引きこそが快感なのである。そしてバーゲンセールに殺到するかのようなオジサン、オジイサンに互角の戦いを挑むのだ。古書展はまさに古書をめぐる修羅場であり、オトコたちの戦場である。