▼オリンピックの最中、
各地の猛暑に負けず、当地も珍しく暑い日が続いた。
我が家にはエアコンがない。
だから、もう骨董品と言ってもいい扇風機に、
涼を求めた。
でも、2,3日おきに朝ランは続けた
前日からの暑さで寝苦しいまま朝を迎えた。
なので、いつもより早い時間に5キロを走り始める。
街中を走っていると、
いつになく、早朝から花壇の手入れをしている方を何人も見かけた。
「こんな早い時間に・・」と驚くと共に、
男女を問わず、皆、麦わら帽子をかぶっていた。
「暑さしのぎだろう!」と、思いつつも、
共通点につい笑みが込み上げた。
やがて、家庭菜園程度の畑が続く通りへ進む。
ここでも、朝の早い時間に農作業をする方が何人もいた。
やはりどの人も頭には麦わら帽子があった。
年に数日だけの暑さだ。
それを警戒して、「麦わら帽子で早朝に一仕事を済まそう」。
それが、ここでは定番なのかも・・・。
また、新しいことに気づいた。
▼ さて、当地に移り住んだ10年前の夏だ。
花壇の雑草を抜いていると、
顔馴染みになったばかりのご近所さんが、
通りがかりに話しかけてきた。
その時、こう訊かれた。
「そうだ。ねえ、きゅうりどうしている?
買ってるの?」。
唐突な質問で、返事に困っていると、
「今、知り合いからもらってきたの。
少しあげるね。」
その方は、手提げ鞄からきゅうりを3本取り出し、
呆然としている私に、
「いいの。遠慮しないで・・。どうぞ」と、差し出した。
これが、最初の「お裾分け」だった。
以来、知り合いが増えるのと同じように、
「お裾分け」も、増えた。
特に、春から夏にかけて、ひんぱんに頂く。
▼ 花壇とお隣の駐車スペースとの間に、
畳を3,4枚縦に並べた程度の広さに雑草が茂っていた。
昨年、そこを掘り返し、お隣さんが家庭菜園にした。
トマトやきゅうり、インゲン、ピーマンなどが、
苗からスクスクと大きくなり、実をつけたようだった。
今春も、そこで土いじりをする奥さんの姿があった。
見ると、昨年とは違う苗もいくつかあった。
我が家の花壇と競うように、次第に緑が増していった。
そして、6月の朝だった。
玄関のチャイムがなった。
レジ袋にレタスを2つ入れたお隣の奥さんだった。
「何とか、ここまでできたので・・・」
早々、家内の得意料理であるレタスと
トマト、ウインナーの入ったスープが、
翌朝の食卓を飾った。
あの小さな畑から収穫したものとは、
どうしても思えなかった。
レタスのシャキシャキ感が・・・。
「これは、美味しい!」。
▼ 広い畑に、ジャガイモの花が一斉に咲くのは、
6月の終わり頃だ。
その時期が過ぎてまもなくすると、
毎年、段ボール箱に山盛りのジャガイモを、
白の乗用車で届けてくれる方がいる。
親戚の農家さんの畑でできた『早堀のジャガイモ』だと言う。
確かに貴重で、味もいい。
しかし、2人暮らしには、量が多い。
そのままにしておくと、芽がでてきそうで、心配になる。
だからと、毎日ジャガイモを使った料理と言っても・・・。
だが、今年は、「大丈夫だ!」。
お正月が過ぎてからのことだ。
一緒に自治会役員をしている方を訪ねると、
帰りに「うちで作ったいも餅だけど、食べてみて」と、
冷凍の筒状かたまりを頂いた。
馴染みのない食べ物だったので、
その場で食べ方まで教えてもらった。
そして、「ジャガイモを沢山もらった時に作って、
こうして取っておくといいよ」と教えてくれた。
冷凍庫から取り出し、
丸餅のような大きさにして熱を通す。
それを砂糖醤油につけて食す。
いくつでも食べられる。
中々の美味だ。
今年は、冷凍保存のいも餅が
何本も我が家の冷蔵庫にある。
▼ 夏が近づき、店頭にスイカが並んだ。
メロンや桃、ときにはプラムに手がのびるが、
2人暮らしにスイカは、大きすぎる。
それでもある日、手頃な価格の小玉スイカに手が伸びた。
適当に冷やしてから、
4分の1をスプーンですくって食べた。
期待は裏切られた。
確かにスイカらしい食感とみずみずしさはあった。
しかし、甘みが少ない。
「矢っ張り値段通り、それに小玉だし・・」
と、納得した。
そして、「これで今年のスイカは終わりでいい」とも。
そんな矢先だった。
「去年はうまくできなかったけど、
今年は、何とかできたので・・・。
主人からです」。
買い求めたものと同程度の小玉スイカを、
パークゴルフ仲間の奥さんが届けてくれた。
売り物であの程度。
だから、家庭菜園の小玉に期待できなかった。
でも、折角の「お裾分け」だ。
丁寧にお礼を言った。
再び適当に冷やしてから、
4分の1をスプーンですくった。
ところがだった。
あの食感と一緒に、スイカの甘さが、
口いっぱいに広がった。
「これは、美味い!」
家庭菜園スイカの完勝だ。
翌日にと残した分が待ちきれず、
お風呂上がりの夜食にしてしまった。
▼ 九州をはじめ西日本から、
洪水の惨状が届く頃から、
当地は急に秋のような気温になった。
そんな朝、家内を誘い5キロの朝ラン。
涼しさもあり、2人とも無事に完走。
クールダウンのストレッチをして、
玄関に戻ると、ドアノブにレジ袋が下がっていた。
確か6月にも同じことがあった。
その時は、袋に春キャベツが1個入っていた。
「今回はなんだろう」と、二人で袋を覗いた。
まだ温かさが残っている茹でたトウキビ(とうもろこし)が、
2本だった。
置き手紙もメモもない。
でも、朝のドアノブにレジ袋を提げていく方の
見当はついていた。
それにしても、
「茹でたものを置いていくなんて・・」。
少し驚きながら、家内がお礼の電話をする。
「茹でた方が、すぐ食べてもらえるから」。
受話器の向こうで、聞き慣れた奥さんの声が、
私のところまで届いた。
野原に咲く待宵草 ~一夜限りの花だとか
各地の猛暑に負けず、当地も珍しく暑い日が続いた。
我が家にはエアコンがない。
だから、もう骨董品と言ってもいい扇風機に、
涼を求めた。
でも、2,3日おきに朝ランは続けた
前日からの暑さで寝苦しいまま朝を迎えた。
なので、いつもより早い時間に5キロを走り始める。
街中を走っていると、
いつになく、早朝から花壇の手入れをしている方を何人も見かけた。
「こんな早い時間に・・」と驚くと共に、
男女を問わず、皆、麦わら帽子をかぶっていた。
「暑さしのぎだろう!」と、思いつつも、
共通点につい笑みが込み上げた。
やがて、家庭菜園程度の畑が続く通りへ進む。
ここでも、朝の早い時間に農作業をする方が何人もいた。
やはりどの人も頭には麦わら帽子があった。
年に数日だけの暑さだ。
それを警戒して、「麦わら帽子で早朝に一仕事を済まそう」。
それが、ここでは定番なのかも・・・。
また、新しいことに気づいた。
▼ さて、当地に移り住んだ10年前の夏だ。
花壇の雑草を抜いていると、
顔馴染みになったばかりのご近所さんが、
通りがかりに話しかけてきた。
その時、こう訊かれた。
「そうだ。ねえ、きゅうりどうしている?
買ってるの?」。
唐突な質問で、返事に困っていると、
「今、知り合いからもらってきたの。
少しあげるね。」
その方は、手提げ鞄からきゅうりを3本取り出し、
呆然としている私に、
「いいの。遠慮しないで・・。どうぞ」と、差し出した。
これが、最初の「お裾分け」だった。
以来、知り合いが増えるのと同じように、
「お裾分け」も、増えた。
特に、春から夏にかけて、ひんぱんに頂く。
▼ 花壇とお隣の駐車スペースとの間に、
畳を3,4枚縦に並べた程度の広さに雑草が茂っていた。
昨年、そこを掘り返し、お隣さんが家庭菜園にした。
トマトやきゅうり、インゲン、ピーマンなどが、
苗からスクスクと大きくなり、実をつけたようだった。
今春も、そこで土いじりをする奥さんの姿があった。
見ると、昨年とは違う苗もいくつかあった。
我が家の花壇と競うように、次第に緑が増していった。
そして、6月の朝だった。
玄関のチャイムがなった。
レジ袋にレタスを2つ入れたお隣の奥さんだった。
「何とか、ここまでできたので・・・」
早々、家内の得意料理であるレタスと
トマト、ウインナーの入ったスープが、
翌朝の食卓を飾った。
あの小さな畑から収穫したものとは、
どうしても思えなかった。
レタスのシャキシャキ感が・・・。
「これは、美味しい!」。
▼ 広い畑に、ジャガイモの花が一斉に咲くのは、
6月の終わり頃だ。
その時期が過ぎてまもなくすると、
毎年、段ボール箱に山盛りのジャガイモを、
白の乗用車で届けてくれる方がいる。
親戚の農家さんの畑でできた『早堀のジャガイモ』だと言う。
確かに貴重で、味もいい。
しかし、2人暮らしには、量が多い。
そのままにしておくと、芽がでてきそうで、心配になる。
だからと、毎日ジャガイモを使った料理と言っても・・・。
だが、今年は、「大丈夫だ!」。
お正月が過ぎてからのことだ。
一緒に自治会役員をしている方を訪ねると、
帰りに「うちで作ったいも餅だけど、食べてみて」と、
冷凍の筒状かたまりを頂いた。
馴染みのない食べ物だったので、
その場で食べ方まで教えてもらった。
そして、「ジャガイモを沢山もらった時に作って、
こうして取っておくといいよ」と教えてくれた。
冷凍庫から取り出し、
丸餅のような大きさにして熱を通す。
それを砂糖醤油につけて食す。
いくつでも食べられる。
中々の美味だ。
今年は、冷凍保存のいも餅が
何本も我が家の冷蔵庫にある。
▼ 夏が近づき、店頭にスイカが並んだ。
メロンや桃、ときにはプラムに手がのびるが、
2人暮らしにスイカは、大きすぎる。
それでもある日、手頃な価格の小玉スイカに手が伸びた。
適当に冷やしてから、
4分の1をスプーンですくって食べた。
期待は裏切られた。
確かにスイカらしい食感とみずみずしさはあった。
しかし、甘みが少ない。
「矢っ張り値段通り、それに小玉だし・・」
と、納得した。
そして、「これで今年のスイカは終わりでいい」とも。
そんな矢先だった。
「去年はうまくできなかったけど、
今年は、何とかできたので・・・。
主人からです」。
買い求めたものと同程度の小玉スイカを、
パークゴルフ仲間の奥さんが届けてくれた。
売り物であの程度。
だから、家庭菜園の小玉に期待できなかった。
でも、折角の「お裾分け」だ。
丁寧にお礼を言った。
再び適当に冷やしてから、
4分の1をスプーンですくった。
ところがだった。
あの食感と一緒に、スイカの甘さが、
口いっぱいに広がった。
「これは、美味い!」
家庭菜園スイカの完勝だ。
翌日にと残した分が待ちきれず、
お風呂上がりの夜食にしてしまった。
▼ 九州をはじめ西日本から、
洪水の惨状が届く頃から、
当地は急に秋のような気温になった。
そんな朝、家内を誘い5キロの朝ラン。
涼しさもあり、2人とも無事に完走。
クールダウンのストレッチをして、
玄関に戻ると、ドアノブにレジ袋が下がっていた。
確か6月にも同じことがあった。
その時は、袋に春キャベツが1個入っていた。
「今回はなんだろう」と、二人で袋を覗いた。
まだ温かさが残っている茹でたトウキビ(とうもろこし)が、
2本だった。
置き手紙もメモもない。
でも、朝のドアノブにレジ袋を提げていく方の
見当はついていた。
それにしても、
「茹でたものを置いていくなんて・・」。
少し驚きながら、家内がお礼の電話をする。
「茹でた方が、すぐ食べてもらえるから」。
受話器の向こうで、聞き慣れた奥さんの声が、
私のところまで届いた。
野原に咲く待宵草 ~一夜限りの花だとか