夏休みを待って、
藤沢市で暮らす孫が二男と一緒にやって来た。
コロナ前以来だから、4年ぶりになる。
なんと、幼稚園の年中組が小学3年に・・・。
今回は、往復新幹線と特急で、
片道7時間をかけての旅。
4泊5日を一緒に過ごした。
北の大地は、これからが夏本番。
だが、私の「‘23 夏」は、この5日間で十分なくらいだ。
① 午後3時、伊達紋別駅で迎える。
疲れなど感じさせない笑顔で現れた。
それだけで、私は満足。
「もう、メロメロ!」。
自宅に着くと待っていたのは、
ようやく旬を迎えたトウモロコシだ。
茹でたばかりが、皿に載ってテーブルへ。
「今朝、伊達の畑でもいだばかりのトウキビだよ。
きっと美味しいよ。
食べてこらん」。
家内が勧めると、まだまだ遠慮がちな孫だったが、
「な~に?」と声に出し、不思議な顔。
私たちもついに道民になってしまった。
「トウキビじゃなかったね。
トウモロコシだったね」。
慌てて言い直す。
今日から5日間、
決して「ゴミ、投げて!」なんて言わないよう、
気をつけなくちゃ。
② 2日目の朝、
いつもならまだ目覚めない5時前のこと、
2階ベッドで寝た孫が、階段を降りてくる足音がした。
私たちの寝室の扉をそっと開け、
「ジイジ、まだ寝てる?」。
「ウン! でも今、目が覚めた。
一緒に寝るかい? おいで」。
遠慮なんて、もうない。
私の横にスルスルと入り込み、モゾモゾと足を伸ばす。
しばらくは、どうでもいいような質問に、
寝ぼけながら付き合う。
そして、枕元の目覚まし時計が鳴る。
私は、手の届くところに常備してある体温計を取る。
ピッピーと鳴って測定を終える。
「僕も計る。いつも計ってるから」。
「毎朝、ピッピーって鳴るまで」。
「ウン。そうだよ!」。
測定の終了音がなるまで、訳もなく嬉しかった。
コロナで始めた朝の検温習慣だ。
コロナが収束してもずっと続けたいと思った。
③ 2人の息子が小学生だった頃、
夏休みになると、決まって千葉から北海道にいる両親の元に帰省した。
帰省するたびに、色々な観光地を回った。
二男は、クマ牧場が好きで、よくリクエストされた。
なので、今回も洞爺湖へ行く途中で、昭和新山のクマ牧場へ立ち寄った。
二男は、「寄らなくてもいいのに」と恐縮しきりだったが、
彼と一緒の孫がどう反応するか、そこに興味があった。
注釈する。
クマ牧場では、熊がしきりに餌をおねだりする姿が見られる。
見物客は、高い檻の上から買い求めたクッキーのような丸い餌を、
熊に向かって投げ入れるのだ。
私は以前から、熊のその姿があまり好きではなかった。
しかし、小さい頃の二男は違った。
そして、今回、同じ年恰好のわが子の手を引いて、
二男は10数頭の大きな熊がいる広い檻の上に立った。
わが子の前で、買い求めた餌を投げて見せた。
孫は、後足で立ち前足を合わせて餌をねだる熊を見て、
目を丸くした。
そこから先は、小学生だった頃の二男と同じ。
自販機で買った餌がなくなると、もう一袋もう一袋と買い求め、
これが最後と私が言うまで、熊のおねだりに応じた。
クマ牧場を去る車の中、2人は「楽しかった」をくり返した。
ハンドルを握りながら私は、相性のいい親子に微笑んでいた。
④ 2年前の誕生日プレゼントは、本人からリクエストで、
青のナップザックだった。
そのザックを背負い、孫はやってきた。
そして、どこへ行くにもそれを忘れなかった。
中には、ポケモンカードと対戦グッズが入っていた。
私には、トレカ専門店で何枚かのカードをねだる計画を立てていた。
それと一緒に、私にポケモンカードを使ったゲームの
対戦相手になってもらうつもりだった。
「ジイジは何でもできるから、すぐにこのゲームも覚えられる。
だから、僕と対戦しよう」。
孫は、そう言いながら、私に何度もゲームを教えた。
私も期待に応えようとテーブルをはさみ、孫のレクチャーを熱心に受けた。
しかし、多様なカードと小文字の解説についていけなかった。
ついに孫は私に失望した。
暑くもないのにタオルで、私は頭の汗を何度も拭いた。
⑤ 4日目、お墓参りの後、釣り堀園まで足を伸ばした。
倶多楽湖を水源とする湧水『カムイワッカ』が、
勢いよく流れる小川のところどころに、池を配した釣り堀だった。
白樺の木立に囲まれ、北海道ならではのシチュエーション。
見上げた空は確かに夏の日差し。
でも木々を抜ける風が心地いい。
思わず深呼吸をしてみる。
孫も真似て、両手を広げる。
感想を聞くまでもないと、竹竿をぶらさげて池へ行く。
釣りエサを渡された時、店の方から
「1時間以内に終わってください。
釣った魚はすぐに調理します。
釣りすぎないよう、食べられるだけにしてくださいね」。
言うとおりだった。
15分程度、あっという間に、
15センチのものが3匹、30センチ以上の大物が1匹、
孫と私でつり上げた。
これ以上は、食べきれなくなる。
そして、湧水が流れる水音を聞きながら周りを散策し、
ニジマスの唐揚げとお刺身を待った。
木立の中に建つ東屋で、テーブルを囲んだ。
「美味しいね。釣ったばかりだからだね」。
そう解説する私の隣で、唐揚げにかじりつきながら孫は、
「こんな場所だから、美味しいんじゃない」。
「ベビー マロン!」「・・?」
藤沢市で暮らす孫が二男と一緒にやって来た。
コロナ前以来だから、4年ぶりになる。
なんと、幼稚園の年中組が小学3年に・・・。
今回は、往復新幹線と特急で、
片道7時間をかけての旅。
4泊5日を一緒に過ごした。
北の大地は、これからが夏本番。
だが、私の「‘23 夏」は、この5日間で十分なくらいだ。
① 午後3時、伊達紋別駅で迎える。
疲れなど感じさせない笑顔で現れた。
それだけで、私は満足。
「もう、メロメロ!」。
自宅に着くと待っていたのは、
ようやく旬を迎えたトウモロコシだ。
茹でたばかりが、皿に載ってテーブルへ。
「今朝、伊達の畑でもいだばかりのトウキビだよ。
きっと美味しいよ。
食べてこらん」。
家内が勧めると、まだまだ遠慮がちな孫だったが、
「な~に?」と声に出し、不思議な顔。
私たちもついに道民になってしまった。
「トウキビじゃなかったね。
トウモロコシだったね」。
慌てて言い直す。
今日から5日間、
決して「ゴミ、投げて!」なんて言わないよう、
気をつけなくちゃ。
② 2日目の朝、
いつもならまだ目覚めない5時前のこと、
2階ベッドで寝た孫が、階段を降りてくる足音がした。
私たちの寝室の扉をそっと開け、
「ジイジ、まだ寝てる?」。
「ウン! でも今、目が覚めた。
一緒に寝るかい? おいで」。
遠慮なんて、もうない。
私の横にスルスルと入り込み、モゾモゾと足を伸ばす。
しばらくは、どうでもいいような質問に、
寝ぼけながら付き合う。
そして、枕元の目覚まし時計が鳴る。
私は、手の届くところに常備してある体温計を取る。
ピッピーと鳴って測定を終える。
「僕も計る。いつも計ってるから」。
「毎朝、ピッピーって鳴るまで」。
「ウン。そうだよ!」。
測定の終了音がなるまで、訳もなく嬉しかった。
コロナで始めた朝の検温習慣だ。
コロナが収束してもずっと続けたいと思った。
③ 2人の息子が小学生だった頃、
夏休みになると、決まって千葉から北海道にいる両親の元に帰省した。
帰省するたびに、色々な観光地を回った。
二男は、クマ牧場が好きで、よくリクエストされた。
なので、今回も洞爺湖へ行く途中で、昭和新山のクマ牧場へ立ち寄った。
二男は、「寄らなくてもいいのに」と恐縮しきりだったが、
彼と一緒の孫がどう反応するか、そこに興味があった。
注釈する。
クマ牧場では、熊がしきりに餌をおねだりする姿が見られる。
見物客は、高い檻の上から買い求めたクッキーのような丸い餌を、
熊に向かって投げ入れるのだ。
私は以前から、熊のその姿があまり好きではなかった。
しかし、小さい頃の二男は違った。
そして、今回、同じ年恰好のわが子の手を引いて、
二男は10数頭の大きな熊がいる広い檻の上に立った。
わが子の前で、買い求めた餌を投げて見せた。
孫は、後足で立ち前足を合わせて餌をねだる熊を見て、
目を丸くした。
そこから先は、小学生だった頃の二男と同じ。
自販機で買った餌がなくなると、もう一袋もう一袋と買い求め、
これが最後と私が言うまで、熊のおねだりに応じた。
クマ牧場を去る車の中、2人は「楽しかった」をくり返した。
ハンドルを握りながら私は、相性のいい親子に微笑んでいた。
④ 2年前の誕生日プレゼントは、本人からリクエストで、
青のナップザックだった。
そのザックを背負い、孫はやってきた。
そして、どこへ行くにもそれを忘れなかった。
中には、ポケモンカードと対戦グッズが入っていた。
私には、トレカ専門店で何枚かのカードをねだる計画を立てていた。
それと一緒に、私にポケモンカードを使ったゲームの
対戦相手になってもらうつもりだった。
「ジイジは何でもできるから、すぐにこのゲームも覚えられる。
だから、僕と対戦しよう」。
孫は、そう言いながら、私に何度もゲームを教えた。
私も期待に応えようとテーブルをはさみ、孫のレクチャーを熱心に受けた。
しかし、多様なカードと小文字の解説についていけなかった。
ついに孫は私に失望した。
暑くもないのにタオルで、私は頭の汗を何度も拭いた。
⑤ 4日目、お墓参りの後、釣り堀園まで足を伸ばした。
倶多楽湖を水源とする湧水『カムイワッカ』が、
勢いよく流れる小川のところどころに、池を配した釣り堀だった。
白樺の木立に囲まれ、北海道ならではのシチュエーション。
見上げた空は確かに夏の日差し。
でも木々を抜ける風が心地いい。
思わず深呼吸をしてみる。
孫も真似て、両手を広げる。
感想を聞くまでもないと、竹竿をぶらさげて池へ行く。
釣りエサを渡された時、店の方から
「1時間以内に終わってください。
釣った魚はすぐに調理します。
釣りすぎないよう、食べられるだけにしてくださいね」。
言うとおりだった。
15分程度、あっという間に、
15センチのものが3匹、30センチ以上の大物が1匹、
孫と私でつり上げた。
これ以上は、食べきれなくなる。
そして、湧水が流れる水音を聞きながら周りを散策し、
ニジマスの唐揚げとお刺身を待った。
木立の中に建つ東屋で、テーブルを囲んだ。
「美味しいね。釣ったばかりだからだね」。
そう解説する私の隣で、唐揚げにかじりつきながら孫は、
「こんな場所だから、美味しいんじゃない」。
「ベビー マロン!」「・・?」