ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

小さな善意 オアシスのよう

2023-08-19 12:17:28 | 素晴らしい人
 コロナが若干治まっていた昨年の夏、
市内の各自治会はまだまだ自粛ムードだったが、
私の地域自治会は盆踊りと子供縁日だけだが『夏まつり』を行った。

 「ようやく娘に浴衣を着せる機会ができました」
と、若いお父さんが笑顔で話してくれたのが印象的だった。
 加えて、久しぶりの盆踊りを楽しんだ方々も少なくなかった。
だから、是非今年も「夏まつりを!」の声が強かった。

 1週間前に、全市を上げて『伊達武者まつり』が、
4年ぶりに本格開催された。
 だから、自治会が行う『夏まつり』には、
さほど参加者がないのではと、勝手に予想していた。

 ところがだった。
開催10日前の打ち合わせ会で、最初に参加集計を行った。
 なんと、昨年の260名を大きく上回り、
396名の参加申込があった。

 今年は、コロナの規制緩和が進んだから、
焼きそばと串焼きセットの予約販売をすることにした。
 その集計結果もまとまった。

 その数を出席者に知らせると、
「会長、当日1時からの準備じゃ、間に合わないわ。
 10時から始めようよ」。
「人手ももっと集めなければだめだわ」。
 予想を越える賑わいに、対応策の声が次々と上がった。

 初めての経験がいくつも私に向けられた。
それぞれが自分の持ち場で頑張ろうとしていた。
 会長として、「それはできません」は決して言えなかった。

 打ち合わせ会が終わり、私が引き受けた仕事は、
大抽選会の景品購入や串焼き肉の追加発注など、
10指を越えていた。
 それからは頭を痛め、目覚めの早い朝が続いた。

 さて、参加者400人の『夏まつり』だが、
多くの方々の手を借り知恵を借りて、無事終了した。
 その全てをここに記すことは無理。

 あえて、小さな善意を2つ記す。
それは夏祭りの準備に明け暮れる私が、一瞬心安らぐ、
オアシスようなことだった。

  ⑴ 
 会場となった広場の真ん中には、盆踊りの櫓が組まれた。
それを囲むように、受付やら食券売場やら、各種販売所、
ヨーヨー釣りや型ぬきなどの子供縁日、それに休憩所が配置された。 
 参加者が迷わないよう、その1つ1つに表示が必要だった。

 表示作成は私の仕事になった。
『生ビール 次の1杯 コッブの再利用に ご協力を!』。
 こんな表示まで作り、A4で20枚程度をプリントアウトした。

 それをもって、市内唯一の文具店へ行った。
目的は、薄いA4紙ではたよりないので、
パウチ加工するためだった。

 20枚の表示を出し、パウチ加工を依頼した。
「少々時間がかかります。1枚309円です」
と、言う。
 何かの間違いかと思った。
聞き返した。
 「1枚のパウチの値段が309円ですか!」。
私の驚きに、店員さんは再確認をした。
 答えは、「はい、309円です」。

 予想外の高値だった。
パウチ加工を諦めるしかなかった。
 透明なクリアホルダーに挟むと言う代替案を考えたりしながら、
店内をウロウロした。

 そこに、たまたまご近所の奥さんがいた。
私から声をかけた。
 奥さんは明るく
「お祭りの準備、お忙しいんじゃないですか」。

 つい、私は今の状況を話した。
すると、
「あら、パウチなら、私の家に機械あります。
このくらいの枚数ならすぐできます。
 預かって行きますから、買い物が終わって帰ったら、
すぐにやって、届けます」。

 こんな助け船が現れるとは・・・。
明るくなった。
 でも恐る恐る訊いた。
「ありがとうございます。
 いくらでやってくれます?」。

 奥さんは、少し笑いながら、
「何言ってるんですか。
ただに決まってるじゃないですか」。
 私の肩をポンと叩いた。

 深く頭をさげ、善意に甘えた。

  ⑵
 焼きそばと串焼きは、
当日のお昼過ぎから調理を始めることにした。

 伊達も例年以上に暑い夏が続いていた。
保健所からは、『食中毒警報』まで出されていた。

 なので、できた焼きそばや串焼きは、
発砲スチロール箱に入れておくことにした。

 大量の予約注文だった。
自治会の物置にある箱だけでは足りなかった。
 当てなどないまま、箱探しをすることに・・。

 何人もの方に声をかけた。
やっと5箱が手に入った。
 まだまだ全然足りなかった。

 社会福祉事務所にも訊いてみた。
倉庫の奥まで探してくれたが、
食べ物を入れるような清潔な発泡スチロール箱はなかった。

 祭りまで、後数日だった。
パークゴルフの集まりがあった。
 ストレス発散にと時間を作り、参加した。

 プレーの合間に、
「発泡スチロール箱を探しているけど、
なかなかなくて困っている」と愚痴った。
 
 「食べ物を入れておくような綺麗なのはね・・」
どの人も同じ反応だった。
 パークゴルフは楽しいけど、
気持ちは沈んでいた。

 ところが、翌朝だった。
電話が鳴った。
 聞き慣れた声だった。

 「昨日の続きだけど、大きめの箱が4つあったの。
何回も洗ってきれいにしたから、大丈夫。
 どこに届けたらいい。
今、車に積んだからすぐに持って行けるけど」

 急ぎ、自治会の会館で受け取った。
まだ私は朝食前だった。
 空腹を忘れていた。
それよりも、胸が一杯になっていた。




 アジサイのようだけど・・・
コメント
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