ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

方言 あれこれ

2017-04-14 22:50:02 | 出会い
 伊達も、ようやく春。
この時期になると、
朝のジョギングも少し明るい気分になる。
 私一人ではもったいない。
家内を誘うことが多くなった。

 つい先日、二人並走して、
いつもの農道へかけ上がった。

 このブログに何回か登場した愛犬と一緒に散歩する彼に、
(私はその方を『サンダルに片手ポケット』と勝手に言っている)
出会った。

 その方は、朝のあいさつと一緒に、
必ず短いひと言をくれる。
 その朝は、久しぶりに家内を見たからだろう。
こんな声が飛んできた。

「母さん、ゆるくないなぁ。」

 私は、一瞬、その言葉がのみ込めなかった。
家内も無反応だった。

 すぐに二の矢がきた。
「たいへんだなってこと。」
 そうだった。
「ハーイ!」
 走りながら、家内が素早く応じた。

 有珠山と昭和新山を背景にした春、
早朝の伊達でのワンカットである。
 
 しかし、『ゆるくない。』とは、
久しぶりに聞いた北海道言葉だ。
 地元でしか耳にできないが、
私の感覚にピッタリくる。

 さて、方言の話題である。
小学生の頃、担任の先生が教えてくれた。
 「私たちの北海道は、
昔、日本全国から人々が集まってきました。
 なので色々な地方の言葉が混ざり合ったので、
東京の言葉と同じになったんですよ。」

 私は、北海道の大学を卒業して、
すぐに東京の小学校に赴任した。
 だから、言葉遣いだけは、心配していなかった。

 なのに、北海道にも方言があることを、
すぐに気づかされた。

 体育の準備運動で、校庭を3周走った子ども達に、
「こわいか?」と尋ねた。
 首を横にふるのを見て、もう3周走らせたことは、
以前、このブログに書いた。

 私にも方言があると痛感したが、
どれがそれかは曖昧だった。
 それにともなった失敗エピソードは、数々あった。

 ある時、熊本出身の先輩教員と、
そんな失敗談で盛り上がった。

  ◆ まずは、私から語る。

 新米先生の初日だ。5年生の担任だった。
すぐに大掃除があった。

 元気のいいY君が、みんなに声をかけながら箒で、
ゴミを集めて、ゴミ箱に入れた。

 「それじゃY君、そのゴミ、なげてきて。」
今日初めて顔を合わせた先生からの、声かけである。
 明るかったY君の表情が、一変した。

 「どこから、なげるんですか?…屋上…か…ら…。」
私を向いたその声は、次第に小さくなっていた。

 私は、明るい声で応じた。
「何言ってるんだよ。焼却炉に決まってるだろう。」

 ごみ箱をかかえたまま、
Y君は大の仲良しのF君の耳元で、ささやいた。
 「焼却炉から、投げるのか。」
「そんな…、違うと思うけど……。」

 2人は、ゴミ箱を持って、そっと教室を出て、
隣の教室の先生の所へ行った。

 しばらくして2人は、空のゴミ箱をもって、
笑顔で戻ってきた。
 「ゴミ、投げてこいって言うから、
本当に投げるのかと思ったよな。」
「ビックリしたよなぁ。」

 「そうか、ゴミはなげるじゃなくて、捨てるなんだ。」
私は、2人に明るく詫びた。
 2人は、ニコニコしていた。
ホッとした。

  ◆ 次は、熊本出身の先輩だ。

 これまた先輩が新米先生の頃だ。
まず1つ目。

 彼は、椅子に腰を下ろす時、必ず「どっ!」と短く言った。
また、反対に腰を上げる時も、
「どっ!」と短く声を発した。

 その「どっ!」は、
彼が生まれ育った熊本のその地方では、
正座やあぐらでも、椅子でも、必ずそう言って、
座り、立ち上がるのだと言う。

 彼には、ごく普通のこと。
誰もがそう言っていると思っていた。
 だから、教室でも「どっ!」と発して、
座ったり、立ったりしていた。

 ある日、女の子が不思議そうに訊いた。
「先生、『どっ!』ってなんですか。」

 彼は、一瞬混乱した。しかし、
「だって、座ったり立ったりするでしょう。
だから『どっ!』って。」
 女の子は、困った顔のまま、その場を去った。

 その表情が気に留まった。
教室の子ども達を注意して見た。
 誰も「どっ!」などと言ってなかった。

 職員室の先生方を注視した。
みんな、無言のまま座り、無言のまま立った。
 「どっ!」と言って、平然としていたことに赤面した。

 数年後、彼は、同郷の方と結婚した。
奥様は今も、家庭では「どっ!」と言っているとか。
 それが座ったり立ったりする時には、
シックリいくと彼も言う。

 理解できそうだが、
なんとなく滑稽に思うのは失礼なことだろうか・・。

 先輩の2つ目は、『あとぜき』である。

 熊本を代表する方言のようだ。
先輩から聞くまで、『あとぜき』など耳にしたことがなかった。

 先輩が小中学生の頃、学校の生活目標として、
『あとぜき』の4文字は、
教室や廊下にたびたび掲示された。
 この4文字で、目標の意味は十分に理解できたそうだ。

 謎解きのような話であった。
熊本で『あとぜき』と言えば、それは、
「出入りのため開けた扉は、最後まできちんと閉めること」
を意味なのだ。

 「ちゃんとあとぜきせんかい!」
こんな遣い方をする。
 先輩は、その言葉で扉の開閉をしつけられた。

 だから、東京で教員になって、
なんのためらいもなく遣った。

教室のドアを開けたまま、廊下に飛び出した子に、
大きな声で言った。
 「あとぜき!」

 その声はどの子に向けらたのか。
何を意味しているのか。誰にも理解できなかった。
 廊下に出た子も、教室にいた子ども達も、
何事もなかったかのような態度のままだった。

 先輩は、その反応に違和感を覚えた。
そして、「もしかして、『あとぜき』は方言か・・?!」
 ぼう然としたまま、目を丸くした。

 さて、『あとぜき』に限らず、
方言には、独特の意味合いや利便性がある。

 なので、方言を標準語に直訳するのはなかなか難しい。
それでも、いくつかの北海道の方言を標準語にして、終わる。

 ・おばんです = 今晩は
 ・はっちゃきこく = 一生懸命やる
 ・ぺったらこい = たいら、ひらたい
 ・みったくない = みっともない
 ・あずましくない = おちつかない、居心地がよくない
 ・はんかくさい = ばかみたい
 ・もちょこい = くすぐったい
 ・だはんこく = 駄々をこねる
 ・じょっぴんかる = 鍵をかける、戸締まりをする
 ・こてんぱ = さんざん
 ・げれっぱ = 一番びり
 ・なんもさ = どうと言うことはない





エゾノリュウキンカ≪だて歴史の杜・野草園≫ 
コメント
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