今、観たい映画がある。昭和16年(1941)に作られた「秀子の車掌さん」という映画である。後に「稲妻」や「浮雲」などの名画を世に出した成瀬巳喜男監督と高峰秀子が初めて組んだ映画だ。原作は井伏鱒二の短編小説「おこまさん」。高峰秀子がアイドルだった17歳の頃の作品で、マニアの間では隠れた名画だという評判だが、DVD化などもされていないので観ることができない。しかし、僕には、まだ物心がつく前に観たような、微かな記憶があるのだ。幼い頃の夏、母の実家の近くのお宮の境内で観たような気がするのだ。確かにこの映画だったことを確認したい気持もある。なんとか観る機会はないものだろうか。