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モチモチの木/斎藤隆介・作 滝平二郎・絵/岩崎書店/1971年初版
両親をなくし、じさまと峠の猟師小屋に一緒に暮らす5歳の豆太は、夜には、おもてにあるセッチンにひとりでいけない臆病。
真夜中にしょんべんにいきたくなった豆太が「ジサマ」と小さな声をかけると、どんな真夜中でも目をさましてくれるじさま。
ある真夜中、まくらもとでうなっていたじさまにびっくりして、豆太は暗い夜道をおいしゃのところへはしります。
おいしゃをつれて雪のふりはじめた峠道をのぼってきたとき、豆太がモチモチの木とよんでいる木に ひがついていました。
次の日、はらイタがなおって元気になったじさまはいう。
「おまえは山のかみさまの まつりを みたんだ。
モチモチの木には ひがついたんだ。
おまえは ひとりで よみちを いしゃさまよびに いけるほど
ゆうきのある こどもだったんだからな。
じぶんで じぶんを よわむしだなんて おもうな
にんげん、やさしささえあれば、やらなきゃならねえことは、
きっと やるもんだ」
切り絵が、木に火がつく幻想的な情景をうかびあがせ感動的です。
「やさしさ」という言葉には、たんなるやさしさをこえて、強さがしめされているようです。
ここにはなぜか、なつかしさをおぼえる風景がひろがっています。