銀のかんざし/世界むかし話 中国/なたぎりすすむ・訳/ほるぷ出版/1979年
毎日、山でシバを刈っては、そのシバを売って暮らしを立てていた太郎と次郎という二人の兄弟。
この二人が山へ行く途中、いつも一人の娘を見かけます。太郎も次郎も、この娘を嫁さんにできたらと思っていました。
ある日、助けを呼ぶ声がするので、二人が駆け付けると、あの娘がトラにくわえられていくところでした。二人が追いかけていくと、トラは娘をくわえたまま、底も見えない深い深い穴に飛び込んでしまいます。
太郎はしり込みしますが、次郎は、太郎に綱でおろしてもらって、娘をトラから救い出します。
太郎は、綱で、まず娘を引き上げます。予感がしたのか娘は銀のかんざしを二つに折って、片方を次郎にわたしていいます。「なにかあったら、このかんざしをめあてに、わたしを探しに来るのよ」
こうした物語では、次郎が穴に置き去りにされます。
ひとり穴に残された次郎は、トラに連れ去られた龍王のお姫さまを助け、竜宮へいきます。
竜宮では、宴会があり、食べるもの着るもの、すべてが上等で、宮女たちが歌や舞で、もてなします。
竜宮のお姫さまも、次郎が気に入っていたのですが、どうしても好きな娘がいるという次郎を引き留められないとわかって、竜宮のお土産に、龍王の机の上の玉手箱をもらうように話します。
玉手箱をもって、やっと家に着いた次郎ですが、米粒一つないという、おばあさんのいうことを聞いて、またシバを売って食べ物を手に入れようと考えると、あの玉手箱から大粒の米があふれてきます。
最後は、銀のかんざしの片方がきめてになって、むすめとめでたく一緒になります。
昔話では、兄が相当のワルに描かれるのが通常で、後味が悪いものが多いのですが、結構さっぱりしていてすくわれます。
竜宮の場面がなくとも、話は成り立ちそうですが、聞き手をあきさせない工夫があったのでしょうか。
竜王のお姫さま、竜宮にいるエビ兵やカニ大将がでてきて楽しく、龍王も「人の世の縁談をぶち壊すのは、本当は好かんのじゃ」とさばけています。