こわがりのはしごしゃ/作:松野 正子・作 なかの ひろたか・絵/福音館書店/1990年
消防車や救急車は子どものすきな乗り物。
火事を消火し、人の命を救う救急車は、あこがれでもあるかもしれません。
高いビルがふえ、いつもは他の消防署からはしご車の応援にきてもらっていた消防署に、あたらしくやってきたはしご車。
ところが、小型消防車、救急車から、「煙で息が詰まり、とても苦しかった」「あついのなんの」「けがにんが二人も出てね」と聞かされ、はしご車は心配になります。
はじてめの出動のとき、胸がどきどきしてはしれなくなります。デパートの火事のときもそうでした。
ところがある日、病院が火事になって、はしご車もかけつけます。
屋上には絵を描いていた男の子が取り残されていました。消防署へ絵を描きにきていた子でした。
はしご車の足に力が湧き、震えが止まって、はしごをのばしていきます。消防士が男の子をがっちりだいてリフターが、はしごをすべりおります。
そして男の子をのせた救急車が病院へ。
こわがりなはしご車が、男の子を助けるために勇気を出すようすや、消防士や救急車の活躍に拍手をしたくなります。
裏表紙には、男の子の描いた、はしご車の絵があります。 助けられた子が、救急車の中で「かならず、はしご車がたすけにきてくれると おもったから、ちっとも こわくなかった」 「あしがなおったら、はしごしゃのえをもって、あそびにいく」といっていましたから、約束をはたしたのです。
裏表紙の余韻が残る描き方は、絵本ならではです。
日本のふしぎ話/川崎大治民話選/童心社/1971年初版
「長靴をはいたねこ」「三枚のお札」の後半部だけのような話です。
長靴では人食い鬼、お札ではやまんばを小さなものにばけさせて、ペロリとたべてしまう結末。
百姓じいさまが馬をつれて、いい声で歌いながら山道を歩いていると、であったのが天狗。
天狗から「つまんで食うてしまうぞ」と、おどされたじいさまが、はじめは大きく、次には小さく化けさせ、カリッ カリッリと飲み込んでしまいます。
楽しいのは、大きくなるさま。
雲をつんぬけ、千年杉より、もっとふとい、毛だらけの足。
天狗さまの自慢話。
「鞍馬山で十年、羽黒山で二十年、天竺で三十年、みっちり修業してきた」
馬もヒヒヒーンとないて、じいさまを応援です。
じいさまの歌もあじがあります。
そよら そよらと
たてがみ なでて ホイ
ふくや 春風 里までも
エーソラ ホイホイ
長い話だと、どこかを切り取ると同じような場面にあいます。いつもいつも新しいものを創り出すというわけにもいかないようです。