かきやまぶし/内田麟太郎・作 大島妙子・絵/ポプラ社/2008年
絵本の素材もさまざま。昔話はもちろん、落語や講談も。この絵本は狂言がもとになっています。
艱難辛苦の修行を終えた山伏が、故郷に帰る途中のできごと。
「とんでいる とりも、はらりんこと、めのまえに いのりおとす ちからが ある」山伏も、腹が減っては戦ができません。
見つけたのが美味しそうな柿。アムアムアム ただ くえ ただ くえ アムアムアムと、無我夢中でほおばっているところを柿の所有者の地主にみつかってしまいます。
梢にかくれた山伏。修行を積んでいるので、自分の姿が見えなくなっただろうと高をくくっています。
ところが地主には、山伏がまるみえ。とうといはずの山伏が柿を盗み食いしていると からかいはじめます。
「よくみるとカラス」「カラスではなくサルじゃった」「トビじゃった」と猿だのトンビなどと からかいます。そのたびごとに山伏は鳴き声をあげ、しまいには木から落ちて こしを したたか うちつけてしまいます。
木から落下した山伏が、看病せいと ボロン、ボーロンボロンと 数珠で、いのりはじめ
ると、ここでも地主は だまされたふり。
いかにも偉そうな山伏を やりこめる地主の方が一枚も二枚もうわて。
エリート意識が鼻持ちならない人を騙す痛快さは、庶民のもの。どこにも偉そうな人はいるもの。
山伏の顔とカラス、サル、トビの恰好、さらに地主のあっかんべえ さまになっています。