かぜのおまつり/いぬい とみこ・作 梶山俊夫・絵/福音館書店/1972年初出1977年
ふうこは、毎朝、町の保育園にいって、おひるすぎ たった一人で バスの停留所から遠い家までかえってきます。
帰り道、あけびをみつけて実をとろうとすると、「どうか ふうこちゃん とらないで。こがらしこぞうの ひゅうすけが、かぜの まつりにくるまでは」といわれ、「ふうん。それなら とらないわ。こがらしこぞうの ひゅうすけと、ともだちになりたいもの」と、とおりすぎます。
きのこをみつけ、とろうとすると「どうか ふうこちゃん とらないで。きたかぜこぞうの さぶろうが、かぜの まつりにくるまでは」といわれ、「ふうん。それなら とらないわ。きたかぜこぞうの さぶろうと ともだちになりたいもの」と、ここもとおりすぎます。
次にやまぶどうにも おなじことをいわれますが、のどがかわいていたので、ひとふさ たべてしまいます。
その時、クマも食べないでといわれますが、 あけびやきのこを むしゃむしゃたべます。
そのうち、山道がしろい霧でつつまれ、雷も遠くでなりだしました。
ふうこが、道が見えなくなって助けをよぶと、こがらしこぞうときたかぜこぞうが、霧をふきとばし、山からやってきました。
今年最後のかぜまつりがはじまりました。
秋から冬の到来をつげる北風や木枯らしの様子が、擬人化された風と共に詩情豊につたわってきます。
ひと昔前は山奥にも生活の営みがあって、あけびやきのこ、やまぶどうなど、山の幸がいっぱいでした。
かぜまつりは、あけびのつるや やまぶどうの実をころがして、次の年への準備をする大事な営みのことでした。
北風や木枯らしと ともだちになりたいというふうこ。クマにであったふうこに、あなごもりするクマは、いっぱい食べなければ ならないんだよというおばあちゃん。自然をまるごとうけとめているようです。
初出が1972年と懐かしい感じの絵です。風が木の葉を散らす様子が何ページにもわたっていて、躍動感いっぱいです。