吸血鬼の花よめ/八百板洋子:編・訳/福音館文庫/2005年
お百姓さんは、ブドウ畑に行く途中、いつもムクドリに声をかけます。
「さあ、ムクドリ、いっしょにブドウ畑にいって、古い枝を切ろう」
「だめだめ、いま、巣を作っているとこなんだもの」
「さあ、ムクドリ、いっしょにブドウ畑にいって、土をおこそう」
「そんなことできないわ。いま、たまごをあたためているところなんだもの」
「いっしょに、ブドウ畑に行こう。草を刈って、ブドウの手いれをするんだよ」
「いま、子どもたちに、えさをやっているところよ」
「おうい、ムクドリ、きょうはどうだね。いっしょにブドウ畑にいって、あとかたずけをてつだっておくれ」
「だめだめ、いま、いそがしいのよ。子どもたちに飛び方を教えているの」
「どうだね、いっしょにブドウ畑に行かないか。きょうは、ブドウを摘みに行くんだが‥」
「いま、子どもたちを呼んでくるわ」
お百姓さんのよびかけに、いつも いそがしいとことわっていたムクドリ。豊かに実ったブドウ畑で、ムクドリの親子は、おなかいっぱい、あまいブドウをごちそうになりました。
お百姓さんは、ムクドリの忙しさもわかっていました。手伝わなかったからといって独り占めはしません。