なきたろう/作・松野正子 絵・赤羽末吉/復刊ドットコム/2017年
なきたろうは「ふんぎゃあ」「ぐえんぐえん」「うわーん」「うわあああ~=~~!」と、いつも なみだを ぶっとばして ないていたが、てんぐとの「なきくらべ」で、負けた天狗の団扇で 山こえ、谷飛んで どっさーんと落ちたのは、山ん中。そこに ちびこい ちびこい 人たち。
なきたろうに泣かれると、涙で村が流されてしまうと、ちびこい 人たちが船に乗ってにげだしました。なきたろうが見ていると、「ああーん」と、赤ん坊の泣き声。このまま泣いたら、船が沈んで みんな死んでしまう。
はらに力を入れ、ぐううーうんと なくのを こらえた。とーー、ぐぐーんと たろうのせいが のび かりんかりんの からだが、ぐいっと ふとった。
また泣きそうになるのをこらえと、ぐぐっと のびて、ぐいっと ふとる。なきそに なるのを こらえる たんびに ぐんぐん、ぐいぐい、 でっかくなって、とうとう おとなの ばいほどに なった。
もう泣かないから 安心しろと いおうとすると もうだれもいない。
村へ帰った なきたろうが ちびこい 人たちが 言っていた三本松の 根元を掘って でっかい石を ほりおこすと 石をのけた穴から、ごぼり ごぼりと 水があふれだし、村のため池に 流れだした。それからは、どんな日照りが続いても、村は水に困ることはなかった。
なきたろうも泣かないようになりたいと思ってはいるのですが、そう思うだけでまた泣けてしまいます。
そんな なきたろうが ちびこい 人を思い、生まれてはじめて 泣くことをガマンできました。困っているひとへの思いやりが たろうを 成長させてくれました。
松野さんの語り口といい、ダイナミックな赤羽さんの絵が 素敵です。
泣き虫の子に読んであげたら 自分の泣き虫は たいしたことないと思うのは まちがいありません。