世界むかし話 中近東/こだま ともこ・訳/ほるぷ出版/1988年初版
都で、毎晩だれかが姿を消してしまう出来事がおきます。
王さまのところには、夫や妻をさがしてくれと何人もの人が押しかけてきました。
王さまは、それまでも百姓の粗末な服を着て、自分の国でなにがおこっているかを知ろうとしていました。
王さまが粗末な服で市場に出かけてみると、聖人のような恰好をした男が、美しい歌声をひびかせていました。歌い手があとずさりすると、聞いていた人々も、まるで呪文をかけられたように、歌い手のあとをついていきます。やがて人々が古い砦の大きな門にはいると、門はしまり、荒くれ男たちがおそいかかります。
荒くれ男たちの目的は、奴隷市場で売り出すことでした。
みんなと一緒についていった王さまもつかまってしまいますが、もっと金が儲かる方法があると、親分にいいます。
王さまは、自分はうでのたつ絨毯職人で、奴隷市場で儲かる三倍もの金を手にいれることができるといいます。
親分は、王さまに絨毯を織らせますが、それは見事なものでした。王さまは子どもの頃から、職人に絨毯の織り方をならっていました。
だれが高価なものを買えるんだという親分に、絨毯はお妃のところへもっていくように話します。
王さまの言う通り、お妃は、親分の言い値の倍で買うことにします。
ところが親分が、古い砦にはいると、あとをつけてきた兵隊たちが、おそいかかり、手下もろともつかまってしまいます。
じつは、王さまは、絨毯に王家に生まれた者だけが知っている古いペルシャ文字を織り込んでいたのです。
もちろん、お妃は、そのことを知って、王さまを助け出したのです。
絨毯の国ならではの昔話です。王さまがうでのたつ職人であったというのも、ほかには見られません。
これまでの昔話には、人身売買はでてこなかったのですが・・。
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